【写真C】画面奥にピントを合わせて遠近感をつける
被写体の距離、カメラの位置:近景から中景、アイレベル・上向き/天候、時間、光線状態:濃霧、午前10時30分、フラット光/カメラ:キヤノンEOS 5Ds R/レンズ:キヤノンEF24ミリF1.4LIIUSM/絞り、シャッター速度:f1.8、500分の1秒/撮影感度:ISO400/ピント位置:画面奥の樹冠/ホワイトバランス:オート/フィルター:なし/仕上がり設定:ディテール重視モード/撮影地:鳥取県・大山、鍵掛峠周辺(写真/福田健太郎)

 写真Cは、写真Aとはまったく異なるピント位置で撮影している。 写真A同様に広角レンズを使用し、黄葉の若木に近寄り、見上げる角度で撮影。絞りは大きなボケの得られる開放付近のf1.8を選択。ピントは手前の黄葉ではなく、画面奥、画面中心へと集まるブナの木の樹冠に合わせた。すると、黄葉は前ボケとなって、奥行きを感じる描写となった。

 霧の風景は不思議なもので、現実を突きつけるだけではなく、幻想的な世界へと誘う。 

 私は、自由な発想を迎え入れてくれる寛容さが霧に包まれた風景にあると感じている。撮影者は気持ちを解放し、なんの気なしに選択していたセオリーから、逸脱することを試してほしい。

 露出を大幅に変え、見た目とは異なる明るさに仕上げる。紅葉にピントを合わせない。多重露光。ブレ描写……。

 新しい気づきと展開が待っているかもしれない。

(写真・文/福田健太郎)

「アサヒカメラ」10月号から抜粋

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