【写真A】霧の白バックで赤い葉を強調する
<br />被写体の距離、カメラの位置:近景、アイレベル・上向き/天候、時間、光線状態:濃霧、午後1時30分、フラット光/カメラ:キヤノンEOS 5D MarkIV/レンズ、撮影焦点距離:キヤノンEF16 ~ 35ミリF4L IS USM、16ミリ/絞り、シャッター速度:f8、60分の1秒/撮影感度:ISO200/ピント位置:画面中央付近の紅葉/ホワイトバランス:太陽光/フィルター:なし/仕上がり設定:ディテール重視モード/撮影地:静岡県・天城山(写真/福田健太郎)
【写真A】霧の白バックで赤い葉を強調する
被写体の距離、カメラの位置:近景、アイレベル・上向き/天候、時間、光線状態:濃霧、午後1時30分、フラット光/カメラ:キヤノンEOS 5D MarkIV/レンズ、撮影焦点距離:キヤノンEF16 ~ 35ミリF4L IS USM、16ミリ/絞り、シャッター速度:f8、60分の1秒/撮影感度:ISO200/ピント位置:画面中央付近の紅葉/ホワイトバランス:太陽光/フィルター:なし/仕上がり設定:ディテール重視モード/撮影地:静岡県・天城山(写真/福田健太郎)

 肌にふれるひんやりとした空気に季節の移ろいを感じながら、風景を撮る。日常から解き放たれた心の軽やかさ。旅先での時間の流れとさまざまな出会いが胸に刻まれ、風景の印象をより深くする。美しい紅葉がドラマチックに目の奥に焼きつけられる。「アサヒカメラ」10月号では秋の風景の撮り方を特集。ここでは、写真家・福田健太郎氏による「霧の紅葉の写し方」を紹介する。ぜひ、撮影の「引き出し」にしてほしい。

【まだまだある「霧」撮影での重要ポイント! 記事に出てくる他の写真の詳細はこちら】

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 霧は季節を問わず発生するが、秋の季語になっているように、紅葉とよく似合う。

 風景は単純化され、なんとも言えない美しさなのだが、山の上などでは数メートル先すらも分からなくなるときがあり、大変危険。安全第一に行動し、森や林の中を歩いてみたい。

 霧の中での撮影は、まず距離を探ることが大切。そのときによって霧の濃さはまちまちだが、像や色が判別できる距離から風景を見つめることが基本になる。

 写真Aは、超広角ズームレンズを真上に向かって写したもの。濃霧の中であったが、手が届くほどに近い、赤い紅葉をメインにしているから、かすむことなく紅葉は鮮明に写し出せている。 画面右から、勢いよく枝葉の広がるリズムを強めたくて、隙間をほとんどなくし、画面いっぱいに紅葉が広がるフレーミングで迫った。

 風景撮影の場合、撮影モードは絞り優先オート、もしくはマニュアルのどちらかを私は使う。この撮影では絞りとシャッター速度を自分で操作するマニュアルを選択した。

 背景は濃い霧であり、肉眼では重い灰色に見えた。見た目に近い明るさで再現すると、紅葉は暗く沈んでしまい、私が思い描いたイメージとは大きくかけ離れてしまう。そこで画面全体が明るくなるよう、絞り値は固定したまま、シャッター速度を下げた。それによって天然の白バックに紅葉が浮かび上がり、鮮やかな色をしっかりと出せた。

【写真B】霧の白バックに黄色い葉を溶け込ませる
<br />被写体の距離、カメラの位置:中景、アイレベル/天候、時間、光線状態:濃霧、午前10時、フラット光/カメラ:キヤノンEOS 5Ds R/レンズ、撮影焦点距離:キヤノンEF70 ~ 200ミリF4L IS USM、90ミリ/絞り、シャッター速度:f8、2分の1秒/撮影感度:ISO200/ピント位置:画面中央付近の黄葉/ホワイトバランス:オート/フィルター:なし/仕上がり設定:ディテール重視モード/撮影地:鳥取県・大山、鍵掛峠周辺(写真/福田健太郎)
【写真B】霧の白バックに黄色い葉を溶け込ませる
被写体の距離、カメラの位置:中景、アイレベル/天候、時間、光線状態:濃霧、午前10時、フラット光/カメラ:キヤノンEOS 5Ds R/レンズ、撮影焦点距離:キヤノンEF70 ~ 200ミリF4L IS USM、90ミリ/絞り、シャッター速度:f8、2分の1秒/撮影感度:ISO200/ピント位置:画面中央付近の黄葉/ホワイトバランス:オート/フィルター:なし/仕上がり設定:ディテール重視モード/撮影地:鳥取県・大山、鍵掛峠周辺(写真/福田健太郎)

■撮影距離の違いで雰囲気を大きく変える

 写真Bは、あと少しでも被写体から遠ざかると、色も形も不鮮明となってしまう、ギリギリの距離から撮影した。場合によっては霧の風景から意識して離れ、望遠レンズを用いると、木立の端正なラインだけを引き出せる。

 この写真も、見た目より明るく仕上がるよう、露出を調整している。黄色い葉をはじめ、全体が淡い色調となり、優美な風景へと変わった。

 濃霧に包まれた、ぼやっとした風景では色がなくなり、コントラストの低い水墨画のような画面となる。オートフォーカスはこのような被写体が苦手だ。木の幹など、分かりやすい像にピントを合わせよう。または、マニュアルフォーカスに切り換え、ライブビューで適度な倍率に拡大表示し、ピント合わせを行う。ピントが合っているか、確認しながら撮影を進めたい。

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