混沌(こんとん)とする会長争い。その先に見ているのは、来年9月の自民党総裁選だ。

 2021年の総裁選には候補者を出さなかった安倍派だが、安倍元首相は、高市早苗・経済安全保障担当相を推した。岸田首相河野太郎デジタル相の推薦人になる議員もいたが、結果は岸田首相がトップ、高市氏が2位となった。安倍派こそが「キングメーカー」という“強さ”を見せつけた。

 安倍派の国会議員は、

「最大派閥なのに、2回続けて総裁候補を出さないということは絶対にない」

 と口々に言う。

 とはいえ、最大派閥の安倍派が結束して選んだトップが総裁選に出れば、当然、首相の椅子まで視野に入る。だからこそ、そう簡単には決まらないのだ。

 一方の岸田首相も再選のためには、安倍派の支援は不可欠だ。岸田派のある国会議員は、

「岸田首相としては、総裁選で安倍派がまとまって応援してくれるのが理想。だから、今の政権運営でも安倍派に配慮している感はある。しかし、数の圧力でずっと安倍派に首根っこを抑えられているのもそろそろ限界。うまく安倍派が分裂して勢力が割れれば好都合だけど、そうなるにはまだまだ時間がかかる」

 と打ち明ける。

 そうした状況で、安倍派の一部では、

「割れないようにするには来年の総裁選も候補者なしの方がいいじゃないか」

 との意見もある。その場合、有力視されるのが高市氏だ。

 放送法をめぐる行政文書を「捏造(ねつぞう)」と断じ、議員辞職も辞さないと突っぱね、国会で追及されていたさなかの4月の奈良県知事選で維新に敗れ、党内では県連会長としての責任を問う声も出ていた。しかし、4月30日には奈良市で「高市早苗議員を内閣総理大臣にする会」が開かれた。

「準備委員会は昨年から動いていました。北海道などでも同様の会があるというので、地元でもと、この時期に発足したんです。奈良県知事選の責任論というのは、地元ではほとんどありません。会場が超満員だったのがそれを証明しています」

 と高市氏を応援する地元の地方議員は言う。

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清和会は分裂の歴史