※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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2023年度、東京都は健康な女性も対象に、卵子凍結の費用を1人当たり30万円程度助成する方針を発表した。少子化が進む現代社会において、卵子凍結は女性の妊娠や出産の選択肢を広げるメリットが期待できる。その一方で、いまだ議論の余地も残っている。卵子凍結の流れ、対象条件、費用といった基礎知識を医師に聞いた。

【図版】年齢によって大きく変わる!卵子凍結による一般的な妊娠率

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 これまで、病気や治療によって妊娠率が低下する可能性のある女性を対象とした卵子凍結には、助成金が支給されていた。例えば悪性腫瘍に対する治療は卵巣にダメージを与える可能性が高いため、治療開始前の卵子を凍結保存することがある。これを「医学的適応による卵子凍結」と呼ぶ。

 東京都は2023年度、健康な女性も対象に支援を拡大する。背景には少子化対策があり、キャリアを優先したい、パートナーがいない、加齢による妊娠・出産が心配などの理由で卵子凍結を選択することを「社会的適応による卵子凍結」と呼ぶ。

 不妊治療を専門とする三軒茶屋ARTレディースクリニック院長、坂口健一郎医師は、「卵子凍結の最大のメリットは妊娠・出産のタイミングを調整できること。また、35歳を過ぎると卵子の数や質が低下することが明らかになっています。35歳以下の卵子を凍結しておくと、将来の妊娠・出産に有効です」と話す。

不妊治療を専門とする三軒茶屋ARTレディースクリニック院長、坂口健一郎医師
不妊治療を専門とする三軒茶屋ARTレディースクリニック院長、坂口健一郎医師

 では、卵子凍結は一体どんな手順を踏むのだろうか。

「卵子凍結には、『受精卵凍結』と『未受精卵凍結』の2種類があります。受精卵凍結とは、採卵した卵子をパートナーの精子と掛け合わせ受精させたものを凍結保存すること。一方、未受精卵凍結とは、精子と掛け合わせる前の状態で凍結保存することを指します」

 施術の流れは、生理2~3日目に血液検査とともに排卵誘発治療を行い、生理開始から12~14日の間に採卵を行う。ここまでは、受精卵凍結も未受精卵凍結も同じ工程を踏む。

「変わるのはこの後からで、未受精卵の場合は成熟している卵子(MII)だけをマイナス196度の超低温の液体窒素で凍結保存します。一方の受精卵の場合は、採卵した卵子と精子を受精させ、胚盤胞に育つまで培養してから液体窒素で凍結保存するという流れです」

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卵子凍結後に妊娠できる確率は採卵時の年齢で大きく変わる