荒川和久(あらかわ・かずひさ) 独身研究家、コラムニスト。大手広告会社において、企業のマーケティング戦略立案やクリエーティブ実務を担当。その後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者として活躍。新刊に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』
荒川和久(あらかわ・かずひさ) 独身研究家、コラムニスト。大手広告会社において、企業のマーケティング戦略立案やクリエーティブ実務を担当。その後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者として活躍。新刊に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』

石山 独居老人が増えて、孤独死や鬱も社会問題になっていると感じますね。

荒川 いまの高齢者の方々は、仕事人間だった人が多いんです。

 会社勤めで友だちがたくさんいると思っていたが、退職後に本当の友達がいなかったと気づくことも多いです。そうすると、話す人が妻だけになって、依存するようになるんです。「妻唯一依存症」ですね。妻の買い物にもついていくようになるんです。

石川 趣味とかがあればいいんですけどね。それがないから、妻に依存してしまうのでしょうか。

荒川 そうですね。だから、私は職場という「所属するコミュニティ」があるうちに、「接続するコミュニティ」もできるだけつくっておきましょう、と勧めています。

 例えば、趣味のメンバーと接続したりすることです。ネット探してトークイベントに参加したり、自治体の読者会にいくというのでもいいと思います。

 私は所属するコミュニティを「居場所」、接続するコミュニティを「出場所」と呼んでいます。出ていくことで「出場所」はつくることができます。

 趣味とかがない人には、仕事を続けることを勧めています。少なくとも、仕事を通じて、人との接続はしやすくなりますから。

石山 シェアリングエコノミーも解決策の一つになると思います。消費という行動で、人とつながることができるからです。

 コミュ力がなくても経済活動でつながることができる。人とつながることのハードルはかなり下がると思っています。

荒川 若い人たちが、多様な体験を喪失していることも気になっています。

 いま出産や子育ては特権的な行為になってきています。例えば、東京23区で出生率が高いベスト3は、中央区、港区、千代田区で、平均所得が高い区です。

 他方で、かつて出生率のベスト3の常連だった江戸川区、足立区、葛飾区は、15年をピークに急減少しています。これらの区は平均所得も低く、家賃相場や住宅購入の相場も安い地域です。

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地域とつながる感覚がない若者が増加