「コミュニケーションの練習であればコンピューターでも十分ですよね。コンピューターは24時間365日使えますので、AI英会話アプリのニーズもますます高まる気がします」

 AIと英語の関係はさらに進化を続けていく。隅田さんの所属するNICTの技術を使った同時通訳システムが今年23年に発売される見込み。多言語間で通訳するテクノロジーで、25年には広く利用されることを目指している。話者と通訳者が交互に話す逐次通訳より短時間で、ほぼ同時に英語で話される内容が理解できるツールが浸透すれば、多くの企業が世界を舞台にビジネスを展開することが可能になる。日本経済を活性化する起爆剤になるかもしれない。

 TOEICで900点レベル、精度は約9割というAIの機械翻訳について、隅田さんはこう締めくくる。

「コミュニケーションの楽しさがわかったらもう一段上にいけるので、そのモチベーションを高めるために、道具と割り切って機械翻訳を使ってみる価値はあると思います。英語が苦手なら、とりあえず機械を使ってみる。そうすることで英語学習のハードルも下がるはずです」

(文/菅野浩二)

隅田英一郎さん/国立研究開発法人情報通信研究機構フェロー。一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会会長。2017年から総務省と協力し自動翻訳の高精度化のために「翻訳バンク」を運営する。また、音声翻訳の国家プロジェクト「グローバルコミュニケーション計画2025」を推進中。

※『AERA English2023』から抜粋