「12年間駆け抜けた」議場であいさつする泉房穂・明石市長=3月24日
「12年間駆け抜けた」議場であいさつする泉房穂・明石市長=3月24日

 統一地方選の前半戦、大阪、奈良の知事選と並んで注目を集めたのが、兵庫県議選の明石市選挙区だ。子育て政策で注目された泉房穂市長(59)が「暴言問題」で退任表明し、その後立ち上げた政治団体「明石市民の会」で擁立した候補がトップ当選した。4月16日告示の市長選には、泉市長の「後継」の市議が立候補を表明している。そうしたなかで、泉市長の“転職先”も気になるところだ。

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 昨年10月、泉市長は明石市議に対し、「選挙で落としてやる」などと暴言を吐いたとして、その責任をとって任期いっぱい(4月30日)での退任を表明した。

 しかし、後継については何度聞いても、

「ギリギリまで発表しません」

 と胸の内に秘めたままだった。

 今年3月に入っても発表されないことから市議会では、

「泉市長に代わる候補なんていない。『出る人がいないので責任をとって自ら出馬する』と言い訳するための時間稼ぎ」

 といった声も出ていた。

 それが3月25日、泉市長は、2期目の市議、丸谷聡子氏(59)と2人で市役所に現れ、会見で後継として紹介した。

 泉市長に直接、市長選について聞いたところ、

「あちこちから、私が出馬するための時間稼ぎとか言われました。しかし、市長選はサプライズで戦えると踏んでいました。丸谷さんに出馬をお願いしたのも数日前で、OKしてくれるだろうという自信もありました。丸谷さんの名前を聞いてまさかという声もたくさんあったけど、ベストな後継者です」

 と明かした。

 なぜ丸谷氏だったのか。その理由についてこう話した。

「丸谷さんは苦労人です。5歳のときに建築士のお父さんが過労死。お母さんが働きづめで体を壊して、丸谷さんは『ヤングケアラー』だった苦しい時期もあったそうです。家も貧乏で大学には行けなかった。結婚してお金をためてから45歳で大学院に進学しています。そうした苦労をしているがゆえに、弱い人の気持ち、痛みがわかる」

 しかし、無所属の丸谷氏は、市議会では是々非々を貫いていた。つまり「市長寄り」でも「泉派」でもなかったはず。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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立候補予定者3人とも子育て政策に重点