ちなみに、ギフトカードと同じ補正予算で、おコメの電子クーポンなどを配る「大阪府子ども食費支援事業」も実施しており、こちらの申込期間は3月22日~6月30日と設定している。

 さて、SNSでは吉村知事への賛辞とともに、「買収ではないか」といった問題視する声も出ていた。

 専門家はどう見るか。選挙制度に詳しい日大法学部の専任講師、安野修右さんは「買収ではない」と話す。公職選挙法の買収罪を問う場合には、ギフトカードによって投票を得ようとする明確な意図が必要だからだという。

 安野さんは、

「今回は『私に投票して』といった明確な意思は見られません」

 と違法性を否定する。

 また、公職選挙法では、形式的にでも候補者らが有権者に金銭や物品などを提供することも禁止している。地方公共団体が金銭などを有権者に配ることを禁止する規定はないが、

「脱法的と言われても仕方ない取り組み」

 と指摘する。

「今回はマスコットキャラクターの『もずやん』が配っているので、吉村知事としては違法ではないという認識なのだと思います。しかし、公選法の立法趣旨からすれば、選挙の近い時期に、府知事の名前が類推される形でギフトカードなどを配るのは良くありません。受け取った人の中には吉村知事を思い起こす人が出てくることは当然考えられます。支給する時期をずらすなど、最大限の配慮をするべきだったと思います」(安野さん)

 今回のような件が問題ないとなれば、同じような事態が各地で横行するようなことにもなりかねない。安野さんはこう付け加える。

「地方公共団体が選挙の直前に予算を使って、バンバンお金を出すようになれば、当然、法律で対処をしないといけなくなる話です。地方公共団体の規定が条文にないからやっていいのではなく、そこは高い倫理、良心に委ねられており、やるべきではないという前提があると見ています」

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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