※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

在宅で親を介護する生活が3年、4年と続くうちに、親の体力・知力・精神力は徐々に衰えて、いよいよ施設入居を考える時期が近づいてきました。いまが入居のタイミングなのか、だれもが迷うもの。ご近所に大きな迷惑をかけたなど、社会的なきっかけがあると、かえって決心はつきやすいそうです。また、親の「耐えられない行為」があるときも、入居を決めやすいとか。いったいどのような行為なのでしょうか。介護アドバイザーの高口光子さんにお話をうかがいました。

【図表】実家の片付けがうまく進まなくなる。親に言ってはいけない13のNGワード

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■親の失敗についての許容度は人それぞれ

 一人暮らしの老いた親の施設入居を考えるきっかけとして、たとえば火やごみの不始末、認知症であちこち出歩いて迷子になる、夜中に大声で叫ぶなど、隣近所への迷惑=社会的な迷惑行為が挙げられます。もう一つは家の中で転んで起き上がれない、食事ができずに数日たっていたなど、親自身の健康維持にかかわる出来事です。

 このようなアクシデントのとらえ方は家族によって異なります。

元気がでる介護研究所代表・高口光子
元気がでる介護研究所代表・高口光子

 ごみが2週間たまっただけで「もうダメ」となる家族もいれば、ごみ屋敷に近くなってようやく限界かなと感じる家族もいます。認知症の親に「お前は泥棒だろう」と言われて「そんな言葉を浴びせられるのは耐えられない」とすぐに施設入居を考える家族もいれば、認知症という病気なんだから言われても平気、と思える家族もいます。

 いわば許容範囲の幅のせまさ/広さがあるのです。

 施設を見学に来られたいろいろなご家族と面談しているうちに、この幅には、それまでの親子関係が影響していると思うようになりました。親が支配的であった家族では、子(親を施設に入れようと検討している本人)の許容の幅はせまく、「きちんとしていたおとうさん(おかあさん)がこんなになるなんて耐えられない」「これまで言われた通りにやってきたのに、泥棒よばわりされるなんて、我慢できない」と、早い時期に施設入居を決定します。一方、親は親、子は子と、それぞれの自立性を重んじてきた親子では、「思うようにさせてもらったから、おとうさん(おかあさん)の意見を尊重します」と、認知症の有無にかかわらず親が在宅を望めば、施設入居を延期することが多いようです。

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高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

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施設入居を即、決意するきっかけもある