悪意のある人を見分けて入国を制限することはできないので、高度外国人材によって研究活動や企業活動を活発化するには、共産党員であろうとなかろうと、それを受け入れていくしかないだろう。

台湾有事を織り込めるか

 日中間での製品や人の流れがほとんど変わらないなかで、大きく変わった分野がある。それが半導体だ。

「軍事に関連する半導体だけは中国から完全に切り離さなければだめだ、ということで、半導体に特化した日台米韓の『チップ4(Chip4)同盟』と呼ばれる枠組みがつくられました。そのなかで、中国抜きでしっかりとした半導体のサプライチェーンを構築しましょう、という話が進んでいます。すでに半導体製造装置を中国に出さないように、米国から日本やオランダに通達が水面下で出されているとみられ、実際に中国向けの輸出は減っています」

 今後、中国における日本企業の生産拠点を見直す大きなきっかけがあるとすれば、台湾有事のリスクへの高まりだという。

「もし、台湾有事が起こればすべてが変わると思います。日本が米軍を支援することになれば、中国の生産拠点は接収されてしまう可能性がありますから。その恐れはロシアのウクライナ侵攻で明らかになりました」

 ロシア政府は撤退する外国企業の不動産を差し押さえ、航空機も接収した。

「中国政府による接収の可能性があるのであれば、コストを度外視してでも工場を国内に回帰させたり、他の国への移転を進めたりするべきだと思いますが、台湾有事が本当に起きるのか、それはわかりません。工場の移転が死活問題となる中小企業に対して、政府が補助金を出すかというと、多分それはできないでしょう。であれば、このままでいくしかない、という企業が多いのが実情です」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)