田端実(たばた・みのる)医師 撮影/高野楓菜(写真映像部)
田端実(たばた・みのる)医師 撮影/高野楓菜(写真映像部)

 上皇様の心臓のバイパス手術を執刀したことで知られる天野篤医師。2021年12月にその後継者として、順天堂大学(東京都)の心臓血管外科主任教授に就いたのが田端実医師だ。低侵襲治療という付加価値で、患者の早期社会復帰を後押ししている。同院は週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』でも心臓手術数全国7位で、ランキング上位の常連だ。

【年表】田端実医師の華麗なる経歴はこちら

 本企画では、医療の「最前線」と「未来」を支えるトップ医師に、ターニングポイントと医療者としての自負、指導者としての展望などを聞いた。好評発売中の週刊朝日ムック『手術数でわかる いい病院2023』から一部抜粋してお届けする。

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 田端実医師(47歳)は、医学部卒業6年目だった2004年に海外に出て、胸骨を切らない心臓手術の「低侵襲心臓手術(MICS)」に出合い、内視鏡下MICS(切開は数センチで、内視鏡のモニターだけを見ておこなう)も習得。22年には単年で442例の心臓手術を手がけ、うち247例をMICSで執刀した日本のトップランナーだ。

■コロナ禍で減った手術数を就任1年目で回復させた

 国内の大学病院に所属したのは研修医の時、1年間ほどだけ。以降は国内の民間病院と海外の病院で経験を積んできた。

「これらの施設では多くの心臓手術を執刀するのと同時に、臨床研究や後進の育成、さらには診療看護師や集中治療医とのコラボによる心臓外科医の働き方改革に取り組んできて、それらの仕事をより大きなスケールでできる環境を求めていた時に、順天堂大学の主任教授の募集があったので応募しました」

 主任教授就任1年目の目標のひとつとして、コロナ禍の影響などで落ち込んだとみられる「手術数の回復」を据えた。

「以前にいた民間病院と比べると、スタッフの待遇やタスクシフト(業務の他者への移管)が十分とはいえず、臨床の現場に人が足りていない状態でした。長年トップクラスの手術数をこなしてきたのは、当科医局員のひたむきな頑張りがあったからです。ただ、それでは持続性が乏しいと考え、仕事の効率化やチーム態勢の強化に着手。さらにコロナ禍で手薄になっていた他院やクリニックとの連携、当科の強みに関する情報発信を積極的におこないました」

 その結果、22年の手術数は計922例と、21年の736例から25%増に回復させ、早くも期待に応えた。

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29歳で米国ハーバード大学の教育病院に