山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「コロナ禍で失われた運動習慣を取り戻す大切さ」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 日本政府は今年の5月8日から、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類を季節性インフルエンザ並みの「5類」に引き下げることを決めました。マスク着用については、屋内や屋外を問わず「個人の判断」に委ねる方針を示しています。

 1月21日と22日に実施された朝日新聞の全国世論調査によると、新型コロナウイルス感染症対策をインフルエンザ並みに緩和することに対し、「賛成」58%、「反対」37%であり、30代以下では「賛成」が8割近くを占めたが、60代以上では「賛成」は4割前後にとどまっていたことがわかりました。また、屋内でのマスク着用を原則不要とする考えについてたずねたところ、屋内でマスクを着けないことが「増える」は24%にとどまり、「変わらない」は74%を占めていたことが明らかになったといいます。

 日本におけるマスクの着用義務はそもそもありません。あくまでも、感染予防対策の一つとして「マスク着用のお願い」がなされてきました。しかしながら、入店するときや公共交通機関を利用する際など、あらゆるところでマスクの着用を「半ば強制」されてしまうことが現実であり、「家から一歩外に出たならば、マスクを着用しなければならない」という日本社会全体の雰囲気や「マスクをなんで着けていないんだ」という周囲の視線は、日本を離れた今でも忘れられません。

 コロナの扱いが「5類」に引き下げられ、マスクの着用が「個人の判断」に委ねられたあかつきに、マスクの着用を「半ば強制」されるような雰囲気が残ってしまうのか、そして多くの日本人がマスクを着用し続けることになるのか。世界保健機関(WHO)が2020年3月に新型コロナウイルス感染症のパンデミックを宣言してから4年目の今年の5月に、これまでの日常が果たして戻ってくるのかどうか、気になるところです。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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