SNSで炎上「男女平等パンチ」の平等とは? 女を制裁する悪意と女を“わからせ”る快感の不気味さ

おんなの話はありがたい

フェミニズム

2023/02/08 16:00

写真はイメージです(Getty Images)
写真はイメージです(Getty Images)

作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、「男女平等パンチ」の不気味さについて。

*   *  *

 SNSをそこまで熱心に見てないので、「そんな言葉がネット上には今あるのか……」と時々驚くようなことがある。たいていは気味の悪い言葉だ。「わからせ」は、このコラムでも書いたことがあるが、最近知ったのは「男女平等パンチ」と「ひととき融資」。どちらも数年前から使われてきた言葉だというけれど、その手の話を不安な顔をしてする女友だちが増えている。

「男女平等パンチ」は炎上したので知っている人は多いだろう。渋谷の路上で女性が男性の顔に平手打ちをした瞬間、男が全力で女性の顔を殴りつけ女性が宙を飛ぶように跳ね、地面に叩きつけられ失神してしまった動画が、先月SNS上で流れた。男はさらに倒れた女性の胸ぐらをつかまえ上半身を起き上がらせるが、すぐにその手を離し、ぐにゃりとした女性は地面に頭を強く打ちつけられる。たとえ相手が女であっても非があれば手加減しないのが本当の男女平等だ、ということで「男女平等パンチ」というらしい。この動画が撮られた経緯はわからないが(動画を撮らずに助けろよ、と思う)、男性に殴られたことのある女性には特にトラウマになるような映像なので見ることはおすすめしない。

 久しぶりに人生で2度、男に殴られたことを思い出した。

 20代の時、女性トイレに入ってきた男に「ここ女性トイレだよ!?」と言った瞬間、間髪を入れずに顔をげんこつで殴られ、数メートル先まで吹っ飛ばされたことがある。そのままトイレの便器に頭をゴンとぶつけ、ぐにゃりとなった。あまりのことに驚き、私の言い方がまずかったのか、本当は女性なのに男と決めつけたからなのか?とかいろいろ考えた。とっさに自分にも落ち度があるかもと考えてしまうのは、「自分の気持ちよりもまず相手のお気持ち」とトレーニングされてきた、この国の女ジェンダーゆえだろう。

NEXT

体がフリーズする“あの感じ”

1 2 3

あわせて読みたい

  • お金に困った女性の「ひととき融資」は金の力を借りた性搾取 なぜ「隠語」を次々と思いつくのか
    筆者の顔写真

    北原みのり

    お金に困った女性の「ひととき融資」は金の力を借りた性搾取 なぜ「隠語」を次々と思いつくのか

    dot.

    2/22

    なぜノコギリだったのか 86歳夫を殺害した76歳妻の長年の恨みが表すもの
    筆者の顔写真

    北原みのり

    なぜノコギリだったのか 86歳夫を殺害した76歳妻の長年の恨みが表すもの

    dot.

    3/10

  • 北原みのり「男論理で語る医大入試問題」
    筆者の顔写真

    北原みのり

    北原みのり「男論理で語る医大入試問題」

    週刊朝日

    9/22

    男にかしずく「男尊女子」 その生き方は社会進出した女性たちの“消極的選択”

    男にかしずく「男尊女子」 その生き方は社会進出した女性たちの“消極的選択”

    AERA

    12/1

  • 北原みのり「“愛国奥様”が国会議員」
    筆者の顔写真

    北原みのり

    北原みのり「“愛国奥様”が国会議員」

    週刊朝日

    2/13

別の視点で考える

特集をすべて見る

この人と一緒に考える

コラムをすべて見る

カテゴリから探す