2002年第23回松尾芸能賞新人賞を受賞したときの氷川きよし
2002年第23回松尾芸能賞新人賞を受賞したときの氷川きよし

 後半は衣装も前半とは一転。深いスリットから黒ストッキングにハイヒールのきれいな脚がチラリとのぞく銀ラメのド派手スーツやショッキングピンクのゴージャスなフェイクファーをまとって、まさに「いまの思い」が弾けるステージだった。

 ステージでのトークも昔は「演歌界のプリンス」として、ご高齢の方たちへの思いやりや感謝を多く述べていた印象があったが、現在は、いい意味でツンデレなところも。そんなツンデレトークの楽しさからか、歌手活動休止直前のラストコンサートでありながら、湿っぽさがない。過去から現在へのイメージチェンジの着地も絶妙にうまくいっている。

 いよいよラスト。アンコールは肩口から胸元を大きく露出したマリーアントワネット風のブラックドレスで登場。髪はアップにしてドレスと同じ素材のヘッドアクセサリーをあしらい、ゆっくりと歩みを進めて登場。筆者の隣の席の80代の女性は「あらぁ~キレイ」とつぶやいていた。

 今年6月の「氷川きよし特別公演」(明治座)も鑑賞したが、18世紀のフランスにタイムスリップする芝居で、そこでも最後に氷川きよしはマリーアントワネット風ドレスを着用していたのを思い出した。

「歌手の道を止めてはならない」とこれまで続けてきたそうだが、いったんこれにてお休みとなる。司会者に歌手活動を休止している間に何をしたいか問われるとこう語っていた。

「22歳からみんながやってきたことをやってきていないから……」と、迷いながら、実はすぐに歌手活動を再開するのではないかと振られると、「そのときはよろしくお願いいたします。皆様がお忘れでなければ」と期待を持たせてくれた。

 ファンの前でのラストステージだったが、過去の氷川きよしも現在もそして未来も大事にしている姿があった。

 歌手活動は休止するが、来年は初のベストアルバムが発売になったり、今回の「きよしこの夜」がWOWOWで放送予定だったりと氷川きよしロス対策も万全だ。そして、30日のTBS「輝く!日本レコード大賞」や大みそかのNHK「第73回紅白歌合戦」のステージも控えている。どんな締めくくりを見せるか、まだまだ目が離せない。(AERAdot.編集部・太田裕子)