では、万が一、日本で大谷選手が訴えられた場合は、どのような判断が予想されるのか。

 村松弁護士は、FTXが破たんした原因は分かっていない部分が多いと前置きした上で、「破たんの事情に違法性が無ければ、大谷選手に責任は発生しません」と話す。

 では、仮に違法性があった場合はどうなるのか。

 村松弁護士は、大谷選手の出演が投資先としての信頼を高めた可能性は否定できないとしつつも、「CMを見ましたが、セリフは一切無く、暗号資産の信用性についても言及していません。大谷選手が、何らかの内部事情を知り得る立場にいたのであれば異なる判断もあるかと思いますが、そうでなければ、大谷選手はFTXの問題点や破たんの可能性について予見できなかったでしょうし、自ら調査するまでの義務はないと思います」として、賠償責任が生じる可能性は低いとした。

 好感度抜群の大谷選手に悪意があろうはずはない、とは多くの日本人が信じるところだろう。一方で判例を見る限り、大谷選手に限らないが、CMや広告に出演することのリスクは否定できない。

 最後に、村松弁護士はこう語る。

「たとえ広告出演者に法的責任が生じないとしても、詐欺的な金融商品などの宣伝に自身が関与していたとなれば、イメージダウンは避けられません。特にマネジメント会社が出演交渉を担当しているのであれば、今まで以上に、慎重に判断する必要があるでしょう」

 視聴者側も、あの人が出演しているから、あの人が推薦しているから、というだけで、サービスや商品を信頼しすぎない注意が必要かもしれない。(AERA dot.編集部・國府田英之)

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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