取材に応じる葉梨康弘法相=2022年11月11日
取材に応じる葉梨康弘法相=2022年11月11日

 葉梨康弘法相の死刑を軽んじた発言に批判が止まらず、岸田文雄首相が更迭を決めた。山際大志郎氏に続き、またしても閣僚の失態。ほかにも寺田稔総務相が政治資金収支報告書に虚偽記載をしたとの疑いがあると指摘されている。岸田政権の足元が崩れ始めている。

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「法務大臣になり3カ月になりますが、だいたい法務大臣というのは朝、死刑のはんこを押しまして、それで昼のニュースのトップになるというのはそういうときだけ、という地味な役職なんです」

 死刑を“ネタ”にした発言で批判の声が広がっていた葉梨法相。岸田首相は11月11日、葉梨法相の更迭を決め、予定していた外遊の出発日を12日に延期した。

 葉梨氏の「失言」は、9日、同じ岸田派の武井俊輔外務副大臣のパーティーでのことだった。

「死刑はんこ発言」以外にも、

「今回はなぜか旧統一教会の問題に抱きつかれてしまいました。ただ、抱きつかれたというよりは一生懸命、その問題解決に取り組まないといけないというようなことで、私の顔もいくらかテレビに出るようになったということでございます」

「外務省と法務省は票とお金に縁がない。(武井氏の)外務副大臣、法相になってもお金は集まらない」

「死刑はんこ」以外にも「失言」を連発していたのだ。

「あれを聞いた瞬間、あちゃ~、言ってしまった。こりゃヤバイと思いました。死刑という命と法にかかわる重い問題をネタにしてしまっている。案の定すぐに、テレビや新聞が速報をネットニュースで打ち始めました。同じ派閥の別の議員から『前にもよく似た死刑の発言をしていたんだ』と聞いて、なんでこんな人が法相なんだ?と思った。岸田首相の耳にもけっこう早く届いていたそうで、側近は頭を抱えていました」

 武井氏のパーティーに出席し、発言を聞いていたという岸田派の国会議員がそう話す。

 翌10日、葉梨法相は釈明に追われる。記者の前に現れた葉梨氏はICレコーダーを出されると、

「紙が見えない」

 といら立つように手で払いのけて、武井氏のパーティーでの発言を起こしたものを読みはじめ、こう弁明した。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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