昭和がテーマのフリマイベントにて(主催、運営に日本人の関与なし)
昭和がテーマのフリマイベントにて(主催、運営に日本人の関与なし)

 スイーツを使い切りカメラで撮る女の子たち、レコード限定でシティーポップをかけるDJイベント、「昭和米国物語」なる中国産ゲームがリリースされるというニュース、ツイードのスーツやコールテンのジャンパースカートが並ぶ古着店……。筆者の住む上海の日常にはいま、「日本の昭和」があふれている。

【写真】カメラ市場で人気な意外な商品

 あれこれとイベントなどに顔を出していたら、自然とZ世代(1995~2009年生まれ)の中国人とのつながりが広がった。彼らは日本語はできない。日本に興味があるわけではない。

 だが、フィルムカメラ、純喫茶、古着などを話題に出しては、「日本の文化(製品)はいいね」と褒めてくれる。彼らが興味を持つ日本は、いつのまにか新技術や最新カルチャーではなくなっていた。

「フィッシュマンズ、坂本龍一、荒木経惟が好き」という奕辰さん(21=モデル、フォトグラファー)はこう言う。

「すべてに儀式感があるというか、ていねいに暮らしている感じ。そこに引かれるのかも。たとえばレコードは、配信アプリで聴くのと違って、じっくり選んで買うことが自分のなかでひとつのできごとになる。好きになるミュージシャンとの出会いがレコードだったらうれしいんです」

「音がレトロだから」などの理由ではなかった。

 奕辰さんは01年生まれ。上海ではもう誰もが携帯電話を使っていた。CD離れが予測されはじめ、音楽は携帯やMP3で聴くものに変化しつつあった。

「つくり手も聴き手も自分の生活や友達、家族のことを考える時間が多かったんだと思います。だから心を動かされる音楽が多いのかな。再生数を競うためにつくられた曲とは明らかに違う。それは音楽だけではなくて、ファッションなどそのほかの文化も。だから僕たちは心引かれるんです」

 駐在員として働く日本人のTさん(43)は、18年に副業で書店「鹿槐行」をオープンした。扱っているのは日本の古本やレコードだ。利用者は99.9%が中国人だという。

Tさん経営の書店の品ぞろえ
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