エリザベス女王(写真:ロイター/アフロ)
エリザベス女王(写真:ロイター/アフロ)

 エリザベス女王が8日、96歳で亡くなった。イギリス国内からだけではなく、世界中から哀悼の意が表されている。BBCによると、国葬は2週間以内にウェストミンスター寺院で行われる見通しだという。そんな中、ツイッターのトレンドに入ったのが、「本物の国葬」というワードだ。日本では安倍晋三元首相の国葬に対して反対意見も多く、いまだに国葬の是非について議論が続いているところだ。イギリスの国葬はどのような仕組みで実施が決められるのか、専門家に聞いた。

【写真】英国で国葬を断った元首相はこの人

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<これから行われるのが本当の「国葬」でしょう>

<イギリスがするのが本物の国葬>

 ツイッターでは、いまこんな投稿がされている。9月27日に予定されている安倍元首相の国葬を比較しての発言だ。

 こうしたツイートに対して、

<そもそも比べるものではない。敬意を表して弔意を示すべき>

<エリザベス女王の死を政治利用するな>

 などと「本物の国葬」という表現に対する批判も沸き起こっている。

 岸田文雄首相は7月22日に安倍元首相の国葬の実施を閣議決定した。さらに、9月8日の国会の閉会中審査では「間違いなく行政権に属する」とし、決定のプロセスには問題ないと主張した。

 しかし、各社の世論調査では安倍元首相の国葬について賛否は分かれている。直近になって安倍元首相の国葬実施決定を「評価しない」が「評価する」を上回り、結果が逆転した調査もあった。岸田首相は「憲政史上最長の政権を担った」「暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くという決意を示す」などと国葬を実施する理由について説明を繰り返しているところだが、理解を得られているとはいいがたい状況だ。

 日本では国葬に関して取り決めた法律がない。どのような人物であれば国葬に値するのか、基準があいまいなため、議論を呼んでいるともいえる。もちろん、「皇室典範」では「天皇が崩じたときは、大喪の礼を行う」(25条)と記されている。

 他方のイギリス。エリザベス女王の葬儀について大きな議論になっているという話はまったく聞こえてこない。今後、ロンドンのウェストミンスターホールに安置され、2週間以内にウェストミンスター寺院で国葬が実施されるとみられている。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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イギリスの国葬は慣習で決まっている?