鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)
鴻上尚史さん(撮影/写真部・小山幸佑)

 初めて彼ができたが「不倫の関係」と悩む48歳女性。別れるべきだが「彼がとてつもなく好き」と懊悩する相談者に、鴻上尚史氏が語る「正義」と「人間のどうしようもなさ」とは。

【相談157】恥ずかしながら48歳になり初めてお付き合いをすることになりました(48歳 女性 つまらない人間)

 初めまして。恥ずかしながら48歳になり初めてお付き合いをすることになりました。しかし、彼には家族がおり不倫の関係です。まさか、男性と付き合うどころか、不倫なんてハードルの高いことが起こるなんて思ってもみませんでした。このまま何もなく死んでいくのだろうな、と思い生きてきました。

 私は今まで大きな組織で働いてきました。しかし組織に嫌気がさし、知り合いが起業したので、そこに入れてもらうことになって今は初めて仕事が楽しいと思い、やりがいを持って働いています。

 けれど相手はその起業した知り合いなのです。働き始めてすぐに「前から好きだった」と告白されました。もちろん既婚者ですし、自分に自信がない私としてはお断りしてましたが、だんだんと私の方がもっと好きになってしまいました。

 もちろん、家族と別れて欲しいとか、結婚して欲しいとか大それたことを考えていないですし、ご家族を一番大切にされていることも理解しています。ずっと続かないであろうことも。

 別れるべきなのも分かっています。でも、初めて今仕事が楽しくやりがいを感じ、ストレスなく働けています。そして、彼のことがとてつもなく好きなのです。一緒にいると楽しくて、幸せです。

 でも、ご家族のことを考えると申し訳ない気持ち、嫉妬する気持ち、とても複雑な気持ちで苦しくなります。

 仕事は辞めたくない、でも彼とは別れなければならない。

鴻上さんは別れるのであれば全ての縁を切るべきであるといつもおっしゃっていますが、私は仕事を辞めたくありません。もちろん、別れも辛いのですが。

 正直どうしたらいいのか分かりません。この年での転職も不安です。ご教示頂けたらと思います。

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鴻上尚史

鴻上尚史

鴻上尚史(こうかみ・しょうじ)/作家・演出家。1958年、愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げ。94年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞受賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲賞。現在は、「KOKAMI@network」と「虚構の劇団」を中心に脚本、演出を手掛ける。近著に『「空気」を読んでも従わない~生き苦しさからラクになる 』(岩波ジュニア新書)、『ドン・キホーテ走る』(論創社)、また本連載を書籍にした『鴻上尚史のほがらか人生相談~息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋』がある。Twitter(@KOKAMIShoji)も随時更新中

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