公園時代のチチ
公園時代のチチ

 飼い主さんの目線でのストーリーを紡ぐ人気連載「猫をたずねて三千里」。今回、お話を伺ったのは、九州在住の50代の会社員、千鶴子さんです。ウォーキング中に見かけた人懐こい地域猫が、だんだんと弱っていくのが気になり、家に連れていく決意をします。猫はすぐに家に慣れ、甘えてくれたのですが……。

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  短い間でしたけど、うちの子として一緒に過ごした雌の地域猫「チチ」の話を聞いてください。

 チチはもともと、近所の自然公園に暮らしている地域猫でした。

 コロナでリモートワークになっていた私は、運動不足解消のために去年5月から夫と公園を歩き始めたのですが、猫たちの存在を知り、歩く時にえさをあげるようになりました。

 去年の9月、たまたまひとりでいつもと違うコースを歩いていた時、公園裏の管理棟の敷地内にいるチチを見つけました。持っていたカリカリをあげようとすると近づいてきて、初めて会うのに体を触らせてくれました。チチは左耳の先がカットされていたので、雌だとすぐにわかりました。(自分の住む地域では、雄が右耳をカットされています)

 公園の他の猫より少しやせて、おとなしい印象でした。その時、カットされたのと逆の耳をけがして血がにじんでいたのですが、けんかでもしたのでしょう。後から思えば、チチはいつも1匹でいたし、“人間は好きだけど猫が苦手”だったようです。

 チチは、他の人にも可愛がられていたと思うのですが、私が声をかけるとぱーっと走って近づいてきて、のどをゴロゴロ鳴らしました。可愛くて、会うのが楽しみになりました。

呼ぶといつも走って寄ってきたチチは“人間好き”だったよう
呼ぶといつも走って寄ってきたチチは“人間好き”だったよう

■「この子はどうして欲しいのでしょう?」

 地域で見守る猫とはいえ、えさだけあげるのは無責任じゃない?と自問自答することもありましたが、家にも保護猫が2匹いて、すぐに引き取ることはできませんでした。

 少し悩みながらチチと公園で交流していたのですが、年を越えてしばらくすると、チチをあまり見かけなくなりました。会えたとしても、ごはんをあまり食べてくれない。しかも1月半ばになり寒くなってきたので、とても気になりました。

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水野マルコ

水野マルコ

水野マルコ/1961年生まれ。ライター。猫と暮らして30年。今は優しいおばあちゃん猫と甘えん坊な男子猫と暮らしています。猫雑誌、一般誌、Web等での取材歴25年。猫と家族の絆を記すのが好き。猫と暮らせるグループホームを開くのが夢。

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