※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

富士山は老若男女多くが登っているから自分も大丈夫だろうと、軽い気持ちで行ってしまい、高山病や低体温症に見舞われる人が少なくない。登山道が開通する7月上旬から9月上旬までの短いシーズンに20万~30万人が入山するが、「疲労で歩けない」「体力の限界」という理由で救助要請をする人が相次ぎ、毎年数人の死者が出ている状況だ。日本山岳会群馬支部が主催する「健康登山塾」で塾長をつとめる齋藤繁医師に、富士山登山で気をつけるべき点などを聞いた。

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■標高2500mから高山病のリスクが急増

 日本最高峰の富士山(標高3776m)には、登山道が開通する7月上旬から9月上旬までの短いシーズンに20万~30万人が入山する。齋藤医師はこう話す。

「5合目までバスや車で行くことができますし、観光の延長として『簡単に登れる』というイメージが強く、気軽に挑戦する人が少なくありません。しかし標高が非常に高いため、気象条件は想像以上に厳しい。特に気をつけなければならないのは『高山病』です」

 高い場所ほど気圧は下がり 呼吸で得られる酸素量は標高3000mで平地の約3分の2に減少する。急激に高度を上げてこうした過酷な環境に突入すると体は順応できず、酸素不足によるさまざまな不具合を起こす。これが「急性高山病」だ。「富士山では登山者の半数以上が何らかの急性高山病の症状を感じると言われています」と齋藤医師は言う。

「多くの人に共通する症状は頭痛。倦怠感(けんたいかん)や吐き気が出る人もいます。酸素不足になった脳は酸素を取り込もうとして血流を増やし、むくんでくる。その結果、頭蓋骨の内側の圧力が高まり、脳の表面を走る痛みの神経や吐き気の中枢が刺激され、症状が起こると考えられています。同じように脳がむくんだ状態になる二日酔いの症状とよく似ています(チェック表を参照)」

高山病自己診断シート
日本登山医学会『高山病と関連疾患の診療ガイドライン』(中外医学社)をもとに作成
高山病自己診断シート 日本登山医学会『高山病と関連疾患の診療ガイドライン』(中外医学社)をもとに作成

 高山病の症状を訴える人が出始めるのは、6合目を過ぎた標高2500mくらいから。標高が上がるにつれて増えていく。

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半数以上が何らかの急性高山病の症状を感じる