エンゼルスが大谷を残したがる最大の理由は、球団が受ける利益だ。今回のトレード騒動で一番のネックとされたのは、大物選手が大好きなエンゼルス・オーナーのアート・モレノ氏の存在だと言われている。トレード期間中にどれだけ他球団が好条件をオファーしても、オーナーが承認しなければ、実現しない。実際、8月1日に報じられた残留についても、オーナーがGOサインを出さなかったことが一番の理由だと考えられる。

 大谷はエンゼルス入団以来、多くの観客やスポンサーを呼び込み、大きなリターンを与えた。これについては周知の事実であるが、今では大谷のおかげで他球団も観客数を増やせている。例えば、7月22日から24日にアトランタで行われたブレーブス戦では、大谷のおかげで3連戦で合計12万8357人と同球場の今季最多人数を集めている。

 今回のトレード騒動で、大谷を欲する球団がかなりいたことが判明した。現地報道によれば、大谷の獲得に興味を示したのは8球団ほど。そしてメッツ、ドジャース、ヤンキース、パドレス、ホワイトソックスが実際に動いたようだ。なかでも、「ヤンキースとパドレスは真剣だった」と、『CBSニュース』が伝えている。今後もチャンスがあれば、大谷を手に入れようとする球団は増えるだろう。

 残留という結果になれば、少なくともエンゼルスはまだ大谷で稼ぐことはできる。しかし、長期契約、高額年俸、チーム成績などに目を向けると、エンゼルスが大谷を残すことは正直厳しくなってきているのも事実だ。今回このようなトレード騒動が起こったのも、こうした山積みの問題が全く解決できていなかったからだ。はたして、エンゼルスはこの問題にどう向き合うのだろうか。もしかすると、大谷の去就はこの冬に決まるかもしれない。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)