(c) mame
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「コペルニクス的転回」をご存じでしょうか。これは「逆転の発想」のことで、18世紀に活躍した哲学者・カントが提唱した「人間が物を認識しているのではなく、物が人間に合わせて存在している」という考え方です。『ざっくりわかる8コマ哲学』(著/小川仁志、マンガ/まめ)では、東西に広く知られる35人の哲学者の思想を、8コマまんがでざっくりゆる~く解説。ここでは、ドイツ観念論の源流となったカントをやさしく解説します。

【人類について知る!8コマまんが】

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 カントは、厳格な性格で有名でした。時計が時を刻むように正確な日常を送り、コツコツと研究をする「ザ・哲学者」といっていいでしょう。散歩も食事も読書もすべて決まった時間にしていました。町の人は彼の散歩の時間で時計を合わせたとまでいわれています。その厳格なカントの哲学もまた、とても厳格なものでした。人間はどう物事を認識し、そこにどのような限界があるのかといったことを厳密に理論化したわけです。

 たとえば、私たちは犬を見て、「あ、犬だ」と思いますが、カントにいわせると違うのです。むしろ犬のほうが私たちの目に合わせて犬になってくれている、と。そんな馬鹿なと思うかもしれませんが、考えてみれば、私たちは犬を知っています。だから犬を見たら犬だと思うのです。

 ということは、私たちが勝手にあれは犬だと決めているだけで、犬が「私は犬です」と主張しているわけではないということです。その証拠に、私たちは得体の知れないものは認識できません。お化けもそうでしょうし、神もそうでしょう。この逆転の発想は、コペルニクスの地動説になぞらえて、「コペルニクス的転回」と呼ばれています。

 私たちは自分の中にあらかじめ備わった、物事を認識する仕組み、時間や空間といったアプリオリな物差しで測れる限りにおいて、物事をとらえることができるにすぎません。それ以外のものは「物自体」といって、人間にはあずかり知れない存在なのです。

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カントが口にした人生最後の言葉