東京メトロや東武鉄道などが一部のWi-Fiサービスを終了したことについては、丹羽さんは「訪日外国人旅行者の利便性、という観点では大きな影響はない」としたうえで、こう続ける。

「東京メトロ車両内で外国人旅行者はTRAVEL JAPAN Wi-Fiを利用できると聞いております。東武鉄道も東京と日光を結ぶ特急電車など、外国人の利用が多いと見込まれる車両では引き続きWi-Fiに接続できるわけです」(丹羽さん)

 バスについては、外国人旅行者の利用が多く、Wi-Fiのインフラ整備が必要な路線については事業者とともに整備を進めていきたいと語る一方、「都営バスについてはそのような指定区間から外れております。外国人旅行者という観点では、Wi-Fiサービスがないことは、大きな問題にならないと考えております」と丹羽さんは指摘する。

撤去はおそらく一過性

 無料の公共Wi-Fiとサービス提供者について、収益と費用の観点から研究を行った新潟国際情報大学の山下功准教授は「鉄道などの交通事業者が契約期間の満了を機にWi-Fiサービスの提供からいったん撤退するというのは、十分ありうる」と話す。

「交通事業者からすればWi-Fiサービスを提供するには通信会社に支払わなければならない固定費が発生します。特に車内のWi-Fiは移動しながら通信できる設備を整えなければならないので、設備費や通信費が割高なものになります。しかも通信技術は日進月歩なので、それに合わせて更新が必要とされる頻度が高い」

 いま、コロナ禍で交通各社は通勤定期券など旅客運輸収入の減少に苦しんでいる。

「乗客を運ぶこと以外の付加サービスを見直して、コストの低減を迫られています。なので、Wi-Fiは新幹線や特急など、料金に見合った車両のみに残して、それ以外は撤去するのではないか」

 一方、車両に比べれば、Wi-Fi設備のコストはずっと低いので、再設置もしやすい。

「需要の少ないWi-Fiはいったん撤去して、ほんとうに必要になった時点で、新しい通信設備を設置したほうが安く済むかもしれない。Wi-Fi設備の撤去はおそらく一過性の出来事であると、予想しています」

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大規模通信障害があった場合に「公衆」は便利では?