日本ハムの新庄剛志監督
日本ハムの新庄剛志監督

 日本ハムは交流戦を終え、26勝37敗でパリーグ最下位(6月15日時点)。だが、その戦いぶりは大きな可能性を感じさせる。指揮官としての実力は未知数だった新庄剛志監督の評価が高まっているのだ。

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 他球団のスコアラーは、日本ハムの野球をこう分析する。

「監督が代わり主力も抜けたので戦い方は当然変わりますが、新庄監督の育成能力がここまで高いとは思わなかった。のびのびやらせているようで、選手たちに求める水準は高い。個人的には清宮幸太郎、万波中正がこの短期間でここまで伸びるとは思わなかった。最下位ですけど確実に強くなっている。厄介な相手ですよ」

 中田翔が昨年のシーズン途中に巨人にトレードで電撃移籍し、オフに西川遥輝(現楽天)、大田泰示(現DeNA)が退団。チームを支えてきた主力たちが抜け、戦力は明らかに他球団より見劣りしていた。だが、新庄監督は目先の勝利に捉われず、長期的ビジョンでチームを強くしようとしている。レギュラーと呼べるのは侍ジャパンで東京五輪の金メダル獲得に貢献した近藤健介ぐらいだろう。他のポジションは白紙の状態で、選手たちの目の色は変わった。

 プロ4年目の清宮は背水の陣だった。昨年の1軍出場はなし。不退転の決意で臨んだ今年は新庄監督の指令で9キロ減量した。指揮官も伸び悩む大器を覚醒させようと必死だった。2月の練習試合の際に、中日の立浪和義監督に清宮の打撃指導をお願いする異例の行動に出ると、開幕直前に稲葉篤紀GMの助言で大幅な打撃改造を断行。オープンスタンスからスクエアになり、バットのヘッドを大きく揺らす動作が消えた。

 56試合出場で打率.255、7本塁打、17打点(6月15日時点)という数字は納得できるものではない。だが、成長の跡は確実に見せている。交流戦全試合に出場して打率.323、3本塁打、6打点をマーク。意識を変えたことで、課題だったミート能力が高くなっている。今月12日の中日戦で6回1死二塁から柳裕也の内角低めの厳しい球を中前にはじき返す適時打。「昨年までだったら空振りか、体が開いて内野ゴロだった」と記者たちが驚く技ありの一打だった。

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