授業には、オンライン上の学習管理ツールとして、課題の出題や連絡のやりとりなどができる「Google Classroom」が用いられていることが多いという。これには児童生徒の使用履歴が残る。
「学校側は、いじめの兆候がないかを履歴で確認して対処することができるかと思います。保護者も子どものパスワードを知っているなら確認できますが、勝手にログインすることで、プライバシーの問題が発生する可能性はあります」(三上さん)
また、授業中に活発な意見を交わすためのチャット機能がいじめに利用されることがある。子どもたちの間で悪口を言い合う場になっていれば、チャット機能をオフにすることもできる。
「コミュニケーションが減って教育効果は薄れるかもしれませんが、いじめの予防にはなるでしょう。しかし、子どもたちは、別のアプリを立ち上げてメッセージを送り合うなど、次の手段を簡単に見つけるため、いじめの抜本的な対策にはならない」(三上さん)
NPO法人児童虐待防止全国ネットワーク理事で子育てアドバイザーの高祖常子さんは、「いじめ問題と端末の普及は一括りにはできない」と話す。
「学習用端末の導入と、いじめの増加に相関関係があるような見方には疑問を抱いています。端末はあくまでもいじめのツールとして利用されるだけ。システムで防げるいじめは防いだ方がいいとは思いますが、端末の利用を制限したところで、いじめが解決するわけではありません。いじめをする子どもは、ストレスが積み重なって、加害者になってしまうことがあります。子どもたちがストレスをため込まないように、学校はスクールカウンセラーなど気軽に相談できる環境を整えていくことが大切だと思います」
いじめを心配する親心としては、子どもの端末のパスワードを管理して、子ども同士のチャットを確認したくなるかもしれない。だが、子どもにもプライバシーがある。高祖さんは、親は子どものパスワードを「知らなくてもいい」という。
「学校からのお知らせなど、親も知る必要がある情報は除いて、何でもかんでも親がチェックするよりも、子どもを信頼してあげた方がいいでしょう。『悪意を持って利用する人がいるから、性的な写真を含めて個人情報は送っちゃダメだよ』という話は親子の会話のなかで伝えておきましょう」
いじめの深刻化を防ぐには、学校だけでなく、家庭でも子どもが相談しやすい親子関係を築いておくことが重要だ。
「大人でもついていけないほど、子どもは端末を使いこなしていきます。親は『どうやって使うの?』と声をかけて、子どもがやっていることに興味を持ちながら、学校の人間関係で困っていることがあればいつでも話して欲しいという気持ちを伝えておきましょう。いじめの兆候を見つけたら、子どもに『力になりたいから教えて』と寄り添って話を聞いてあげてください。中高生になると親に言わなくなりますが、いざという時に相談できる親子関係は大事です」(高祖さん)
学習目的に限らず、インターネットを介してコミュニケーションをとるのが当たり前の時代。高祖さんは「利用を制限するのではなく、どううまく活用していくか」を学校や家庭で話し合う機会を増やしていくべきだという。
子どもだけでなく、同時に大人も情報リテラシーを高めていくことが求められている。
(AERA dot.編集部 岩下明日香)