画像はイメージ/Getty Images
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 全国の小中学生に1人1台の学習用端末を配る「GIGAスクール構想」が本格的に始まってから1年が経った。文部科学省の見込みでは、2021年度末までに98.5%の小中学生へ学習用端末としてパソコンやタブレットが整備された。コロナ下が追い風となり、教育現場におけるICT(情報通信技術)の活用が急速に進んだ。その一方、情報リテラシーの欠如から、端末をいじめの道具にする懸念も高まっており、対策などについて議論を呼んでいる。

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 文部科学省が21年11月に発表した、いじめの現状調査(対象は小・中・高等学校及び特別支援学校)では、いじめの認知件数が減少する一方、パソコンや携帯電話などで誹謗中傷や嫌なことをされるという件数が年々増加していた。17年度は12,632件、18年度16,334件、19年度17,924件、20年度18,870件だった。

 学習目的の端末が、いじめの温床にならないための対策は必至だ。20年11月、東京都町田市の小学6年生の女子児童が自殺した事件は記憶に新しい。女子児童が通っていた小学校は、「町田発未来型教育モデル校」として、全国に先駆けて19年度からタブレット端末が配られていた。両親は、チャット機能に悪口が書き込まれ、端末がいじめに利用されていたと訴えた。

 ITジャーナリストの三上洋さんは、学習用端末の導入による歪みを指摘する。

「新型コロナの流行により休校を余儀なくされたなかで、文科省はGIGAスクール構想の導入を急ぎました。ただし、端末は完備されたけれども、教員の負担が増え、利用に際して大事な情報リテラシーの教育は後回しになったことは否めません」

 情報リテラシーにおいて、基本となるのがパスワードの管理だ。自殺した小6女子児童が通っていた小学校を例にあげると、当初、端末のIDを出席番号などにし、パスワードは全員同じ「123456789」に設定されていた。

「簡単に推測できるパスワードを設定せず、他人に教えないのが、情報リテラシーのイロハのイ。おそらく、1クラス約30人いると、教員は個々の端末を管理するのが大変なので、共通のパスワードにしたのでしょう。同じにすると、簡単になりすましができてしまいます。例えば、Aさんが、いじめようとする対象者BさんのID・パスワードでログインし、Bさんのふりをして別の子Cさんを攻撃するようなことを書き込む。こうしてBさんを加害者に仕立てることもできるのです」(三上さん)

 町田市の小学校のように、学校側が同一のパスワードを指定していた場合はどうすればよいのか。

「変更して子供に覚えさせればよいと思います。念のために先生や学校側に変更したことを伝えておいたほうがいいでしょう」(三上さん)

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