茨城「雨引観音」境内
茨城「雨引観音」境内

 今年の天候はかなりぐだぐたで、好天が続く季節に気温が上がらず多雨で、おかげで値段が安定しているはずの種類の野菜が、軒並み値上がりするという結果を招いた。関東甲信は、九州・四国に先駆けて今週頭に梅雨入りしたと予測速報が出されたが、その当日朝には「梅雨入りは来週か」という見解を示していて、気象庁も現在の天候には翻弄されているようだ。

○暦の上の「梅雨」とは

 さて「梅雨」は、日本では北海道と小笠原諸島を除く全土で見られる気象だが、アジアでも中国や朝鮮半島の一部、台湾、東アジアでこの雨期が存在する。また、日本では暦上に「入梅」が設定されており、現在の6月11日頃がその日にあたる。「頃」というのは特定の日が定められているわけではなく、時代によって二十四節気(太陽年を24等分して季節を表した暦上の点)の芒種(ぼうしゅ/夏至のひとつ前の節気。2022年は6月6日)の次に来る丙あるいは壬の日(十干による日の数え方)が「入梅」の日とされてきた時代が長く続いた。江戸時代以降は運用される暦によってルールが毎年変化してきたが、現在は太陽の位置(黄経80°)で入梅の日が定められる。2022年は本日6月11日が暦上の梅雨入りである。古代の暦と比べてもほとんど誤差がないことには驚かされる。

○「梅雨」の語源とは

 ところで「梅雨」と書いて、なぜ「つゆ」と読むのか疑問に思ったことはないだろうか。「梅」の字を「つ」と読むのは後ろに「雨」がついている時だけである。「梅雨前線」と書けば「ばいう」と読むので「梅」の読みとしては納得できる。この雨期の季節を「梅雨」と呼ぶ理由はいくつか考えられている。

「梅雨」と表記するのは中国由来と言われている。ひとつは、揚子江周辺で取れる梅が熟す頃が雨期だったことから、「梅の季節の雨」が「梅雨」となったという説。また、雨の季節にカビが生えやすかったことから「黴雨(ばいう)」と呼ばれ、これが同音の「梅雨」と変化した説。つまり、日本に入ってきた頃は「ばいう」という言葉だったようだ。

○梅雨と梅の関係は

 これが「つゆ」と読まれるようになったのは、江戸時代頃だと考えられている。雨でいろいろなところに露がつくことから、「つゆ」と呼んだ説。カビの発生で食べ物がどんどんなくなり「費える」(ついえる→つゆ)説。クリのおしべが落下することを墜栗花(ついり)と古い言葉で呼ぶが、これがちょうど梅雨の季節と重なるため「つゆ」と呼んだ説。収穫した梅がつぶれて「潰ゆ」(つゆ)となった説など、探せば各地でもっといろいろ説があるようだ。ただし、日本でも梅の収穫と梅雨は関係があるようで、梅雨前線と同様に梅の収穫県も北上していくらしい。この長い雨期と梅は日本でも大いに関係があるということだ。

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鈴子

鈴子

昭和生まれのライター&編集者。神社仏閣とパワースポットに関するブログ「東京のパワースポットを歩く」(https://tokyopowerspot.com/blog/)が好評。著書に「怨霊退散! TOKYO最強パワースポットを歩く!東東京編/西東京編」(ファミマ・ドット・コム)、「開運ご利益東京・下町散歩 」(Gakken Mook)、「山手線と総武線で「金運」さんぽ!! 」「大江戸線で『縁結び』さんぽ!!」(いずれも新翠舎電子書籍)など。得意ジャンルはほかに欧米を中心とした海外テレビドラマ。ハワイ好き

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