監督の水谷豊さん(左)と主演の檀れいさん(撮影/松永卓也)
監督の水谷豊さん(左)と主演の檀れいさん(撮影/松永卓也)

水谷豊さんが監督・脚本を務める映画『太陽とボレロ』が6月3日に公開された。経営難から解散の危機にひんした地方都市のアマチュア交響楽団の主宰と団員たちが、それぞれの“有終の美”を飾るべく奔走するエンターテインメント作品だ。音楽の道を諦めて家業を継ぎ、地元で楽団を主宰する主人公・花村理子を演じた檀れいさんは映画初主演。監督と主演俳優の2人に、映画にかけた思いや撮影秘話を聞いた。

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【前編】映画初主演「檀れい」が見た監督「水谷豊」の横顔 『太陽とボレロ』特別対談 より続く

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――映画『太陽とボレロ』では、文化・芸術に対する助成金の問題など、楽団とそれを支える資金の問題についても触れられている。楽団員の一人が放つ、「日本はダメだよね。音楽や芸術に理解がなくて」という言葉も印象的だ。

水谷 僕がこれまで芸術に携わる方々にお会いし、お話しするなかで印象に残っていることの一つに「助成金」の問題がありました。「助成金は簡単には受けられない」「日本ではなかなかハードルが高い」といった話は何度となく耳にしていましたから、「実際に大変なのだろうな」という思いはずっと抱いていました。もっと芸術全般への理解が深まればいいな、という思いはありましたね。

 我々が身を置くエンターテインメントの世界に対して、国や行政がどれだけ理解してくれているのだろうと考えると、撮影一つとっても、他国との違いを感じることがあります。例えば、アメリカなどでは非番の警察官が撮影のために交通整理をしてくれることもあり、撮影もスムーズに進む。国全体にエンターテインメントを大切にする姿勢があるんですね。

 僕自身、どれほどエンターテインメントが心に豊かさをもたらしてくれたか、そのことを改めて感じることがあります。そうした思いがセリフになっていたのかもしれないですね。

 私も脚本でそのようなセリフを目にしたときは、すごくうれしかったですし、何より作品のなかでそうしたことをちゃんと伝えられることがうれしかったです。実際に携わっていなければなかなかわからないことではありますが、他の国がどのような形で文化・芸術を守っているのかということを知る機会にもなります。

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水谷監督は誰よりも動き回り、誰よりも笑顔