この法案を通して、様々な意見の人、様々な立場の人の声を聞いた。どこに立っているか、どの現実を見ているかで、この法案の見方はずいぶん変わるのだと思った。そして、改めて突きつけられるのは「当事者の声はどこにある」ということだった。

 性産業に巻き込まれた女性がSNSでこんな投稿をしていた。

「ハイリスクな性産業の世界をうまく生き延びて勝ち抜く女性はいますよ。本当にごくわずかですが、います。ですが、途中で命を落とす女性も一定数います。命を落とさなくても、高確率で生涯引きずる傷を負うことになる」

 性産業は命のリスクが高い。それは業界が「クリーン化」したところで、「実際の性交」が行われ続ける限り変わらない。お金と契約で性交の合意が得られると考えられる限り、被害者は再生産され続けるだろう。

 性産業を批判すると、「まずは女性の貧困問題を語れ」とか、「性は悪くない」「ピューリタン的だ」などと嘲笑されることもある。それほど、性売買も、リアルな性虐待を娯楽として楽しむ文化も、この社会に根付いてしまっているということだろう。「性搾取」の深刻さが、「お仕事」や「表現」になった途端に通じなくなってしまう。

 AVに関する法案は、報道などによれば今国会内で成立させたいということだ。

 最後まで丁寧に追いかけていきたい。

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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