俳優、脚本家の佐藤二朗さん
俳優、脚本家の佐藤二朗さん

個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、年齢について。

【写真】やっぱり仏だった

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 なったぜ。

 俺、53歳になったぜ。5月7日で、俺、53歳になったんだぜ。

 過去、幾度となく、当コラムで、俺の精神年齢の低さに関して言及してきた。

 ソワソワする。浮かれる。テンパる。わりと頻繁に奇声を発する。しかも発した自覚があまりない。すぐに妻に頼る。その日の出来事をすべて妻に話したくなる。妻(母)に話を聞いてもらう権を息子と熾烈に奪い合う。息子と野球盤とかで遊ぶと28対0みたいなスコアで勝利する。その勝利にわりと歓喜する。妙な自作の言葉を突然口走る。しかも口走った記憶がわりとない。妻のことを「お母たぬ」と言う。折り畳み傘がうまく畳めない。静電気が怖い。方向音痴である。カバンを持つとかなりの高確率で肩ヒモがグニャグニャになる。そのグニャグニャの肩ヒモをなかなか自分で直せない。肩ヒモを直せないのに足が31センチもある。足が31センチもあるのに短足。短足なのに顔が大きい。顔は大きいのに気は小さい。

 なんか、だんだん腹が立ってきたし、最後の方は精神年齢の低さとはなんら関係のないことを書いてしまったが、しかし一方では、白髪は増え、老眼は容赦なく進み、お酒にも少し弱くなり、カルビなどの脂身が多い肉はあまり食べられなくなった代わりに、漬け物とかシラスおろしなどのサッパリ系を好むようになり、思いついたダジャレを口にしないと気が済まなくなり、要するに老化は徐々に、そして確実に俺の元に訪れている。

 もう終わりにしなければならぬだろう。精神年齢の低さをネタにすることはもう終わりにしなければならぬ。53歳になったことを機に(←わりと毎年言ってる)俺は歳相応の精神年齢に飛躍しなければ。だって大人だから。俺、53歳の大人なんだから。

 思えば昨年は「精神年齢8歳の52歳児」を標榜していた。標榜はしていたが、わりと実は冗談のつもりだった。するとラジオ番組でプロの占い師さんから「佐藤さんの精神年齢は11歳です」と言われた。わりと近かった。あんまし冗談じゃなかった。さらにテレビ番組で別の占い師さんから「6歳です」と言われた。冗談で標榜していたことが、むしろ2歳ほど背伸びしていたことが発覚した。いよいよあとがなくなった時、また別の占い師さんから「15歳です」と言われて、ガッツポーズした。

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佐藤二朗

佐藤二朗

佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家、映画監督。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や映画「幼獣マメシバ」シリーズの芝二郎役など個性的な役で人気を集める。著書にツイッターの投稿をまとめた『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)などがある。96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がけ、原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)がBD&DVD発売中。また、主演映画「さがす」が公開中。

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