日本に女性研究者が少ないのはなぜ?(※写真はイメージです/GettyImages)
日本に女性研究者が少ないのはなぜ?(※写真はイメージです/GettyImages)

 研究者として活躍する女性が少ない日本社会。対して、海外では女性研究者の活躍が広がっている。その違いにある、女性研究者が置かれた実情を考察してみたい。現在発売中のAERAムック『大学ランキング2023』(朝日新聞出版)より紹介する。 

【データ】日本と諸外国、女性研究者の割合はこんなに違う

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 日本の研究者のうち、女性研究者が占める割合は17.5%(総務省「科学技術研究調査」2021年)。この数値は緩やかに上昇してきてはいるものの、イギリス、アメリカなどの先進各国と比べると目立って低い(グラフ参照)。 

 背景には、大学院に進学する女性が少ないという事実がある。文部科学省によると、大学生の女子学生比率は45.6%だが、大学院生になるとその数字は32.7%にまで下がるのだ(「2021年度学校基本調査」)。

 男女比の偏りが起こる局面は、進学だけではない。教育社会学やジェンダー研究が専門の山形大・河野銀子教授は、「進学」に加え、「採用」「キャリアの中断」という3段階に課題があると分析する。 

「研究者の就職先の約6割は民間企業なのですが、企業研究者の男女比はおよそ9:1。企業が女性研究者の採用に積極的でなく、活躍の場が用意されていないと言えるでしょう。さらに、頑張って研究者のキャリアを歩き始めたとしても、出産・育児で数年研究を中断すると知識的なギャップが生じて復帰が困難になり、研究の道をあきらめてしまうケースも多く見られます」 

■大学教員に性別分業の傾向評価、昇進の差に

 研究者のもう一つの主な就職先は大学だ。ここで日本の大学教員のジェンダー構成に注意を向けると、女性がキャリアを築くことの難しさが浮かび上がる。 

「日本の大学は、講師、准教授、教授と階層が上がるごとに、男性の比率が高まり、女性の比率が低くなるという構造になっています。これは、女性が出産・育児を機に仕事を辞めてしまったり、復帰したとしても昇進が遅れてしまったりすることが要因でしょう。また、性別分業の傾向があって、男性は研究者、女性は教育者としての仕事の比重が重くなりがちという側面もあります。学生のケアに尽力しても大学内で評価されにくいため昇進にはつながらず、自身の研究も進めにくくなるというわけです」 

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男女比の偏りが生む研究への影響