1980年、シングル「アンジェリーナ」、アルバム『バック・トゥ・ザ・ストリート』でデビューした佐野元春。以来40年以上にわたって質の高い楽曲を生み出し、刺激的でスタイリッシュな存在であり続けている。どうして佐野元春だけがカッコいいままでいられるのか? ファン歴40年の筆者が考察する。
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今年3月に芸術分野の優れた業績を表彰する「芸術選奨(第72回)」が発表され、大衆芸能部門で佐野元春が文部科学大臣賞、藤井風が文部科学大臣新人賞を受賞した。
藤井風は1997年生まれ、岡山県出身のシンガーソングライター。「何なんw」「きらり」などの話題曲を次々と送り出し、昨年のNHK紅白歌合戦に初出演。3月にリリースされたニューアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』も大ヒットを記録している。最新の洋楽のテイストを取り入れたサウンドと、美しい日本語の響きを活かした歌詞との絶妙なバランス感覚は、ここ数年で登場したアーティストのなかでも際立っており、2020年代の新たなスターの座を手にしつつある。
1980年にデビューした佐野元春もまた、当時の音楽シーンに斬新な衝撃を与え、日本のポップミュージックの在り方を大きく変えたアーティストだ。40周年を越えた現在も精力的な活動を継続。「いつの時代も変わらず、鋭い眼(まな)差しと瑞々(みずみず)しい感性で日本のポップ音楽界に有効な方法論を提示し続けた」という受賞理由にも示されている通り、80年代以降の音楽シーンに多大な影響を与え続けているレジェンドだ。
■ブレイク直後に渡米
佐野元春は一つのスタイルに留まることなく、常に変化を繰り返してきた。
1982年、名曲「SOMEDAY」を含む3rdアルバム『SOMEDAY』を発表。80年代の若者の心象、都市の風景を描いた本作のヒットによって佐野は高い評価を得た。さらに翌年リリースされたベストアルバム『No Damage(14のありふれたチャイム達)』がオリコン1位となり商業的なブレイクを果たしたが、なんとその直後に渡米。約1年間、ニューヨークに活動の拠点を移した。