ボクシング転向を表明している那須川天心
ボクシング転向を表明している那須川天心

 キックボクシング界の“神童”那須川天心のボクシング転向が話題となっている。一足先にキックからボクシングの世界に飛び込んだ元K-1王者・武居由樹とともに新たな舞台でも活躍が期待されている。

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 彼らはなぜボクシングに惹かれるのだろうか。そして那須川、武居ら元キックボクサーはボクシングの世界でも今後チャンピオンにまで登りつめることはできるのだろうか。元JBC(日本ボクシングコミッション)事務局長で現顧問の安河内剛氏が語ってくれた。今回は後編。【前編から続く】那須川天心、武居由樹は「世界を獲れるか?」

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~技術、公益性、ファイトマネー

 リング上では「倒すか、倒されるか」という手に汗握る展開が繰り広げられる。リング外でも多くのエンタメで題材にされ、映画『ロッキー』シリーズ、『あしたのジョー』『はじめの一歩』など多くの名作漫画を生み出してきた。なぜボクシングは多くの人々を惹きつけるのだろうか。なぜボクシングの世界で勝負したいと格闘家たちは感じるのだろうか。

「那須川、武居もそうですが、パンチを習得していく中でボクシング技術の奥深さに触れ、拳だけで戦うための技術がおもしろいと感じたはずです。拳しか使えない制約の多いスポーツであり『制約の美』というのがあります。攻撃、防御の全てにおいて技術の深みがある。そこに気付くとボクシングで勝負したくなる。格闘家の性だと思います」

「ボクシングは競技スポーツとして扱われ公益性があるのも魅力だと思います。ボクシングのような統括団体がない競技は国内一般紙がスポーツとして積極的に扱うことができない。テレビ中継などあってもエンタメ扱いです。ボクシングは純粋なスポーツとして扱ってくれます。スポーツ紙はもちろん一般紙報道でも新人王戦を取り上げてくれる。そこに気付いてボクシング界に入る選手もいます」

「下世話になりますがプロなのでお金も魅力です。ファイトマネーが桁違いに高くなります。例えばコロナ禍で流れてしまいましたが昨年末予定だった村田諒太の世界戦は6億円とも言われていました。1試合でこの額ですから野球、サッカーなどと比べても引けを取らないドリームです。キックや総合ではよほど飛び抜けたネームバリューのある選手でないと難しい。それは選手自身が最もよくわかっているはずです」

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天心と武居の今後の課題は?