24日、衆院予算委員会で答弁する政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長
24日、衆院予算委員会で答弁する政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長

 JCHO傘下の病院では不可解な動きもあった。城東病院では昨年9月、コロナ専用病院の運用を開始した。他方で、東京蒲田医療センターにあったコロナ病床を78床から50床に減らしていたという。ある厚労省関係者はこう語る。

「JCHOはコロナ専用病院をつくるとアピールしながら、裏では病床数を減らしていました。JCHOの5病院のコロナ病床数は、都の1病院分のコロナ病床数と同じ程度しかなく、本当に病床が必要な東京では十分な病床強化に至っていない」

 尾身会長は先日、『ステイホームは必要ない』、『若年層は検査なしで自宅療養』などの見解を発表し、物議を醸したばかりだ。

 事実関係を確認するため、JCHOに取材を申し込んだ。JCHOは当初、「改めて連絡する」と対応したが、その後、回答期限を過ぎても連絡はなかった。

 専門家はどう見るか。海外の医療体制に詳しいキヤノングローバル戦略研究所の松山幸弘研究主幹は「コロナ病床を率先して確保するべきなのは、JCHOやNHOなどの公立医療機関。コロナ患者を受け入れず、コロナ関連の補助金の約半分を使わずに利益に計上するというのは本来のあるべき姿からかけ離れている」と指摘する。

 注目するのは、イギリスやカナダ、オーストラリアなどの海外での医療体制だ。これらの国では多くの公立病院が経営統合され、一つの大きな事業体がつくられている。そのため、緊急時に大きな配置転換を行いやすくなっているという。

 例えば、イギリスでは国営の国民保健サービス(NHS)がコロナの感染が流行り始めた20年3月に、一般病床10万1千床のうち3万床超をコロナ病床にし、医療スタッフの約20%をコロナ医療に再配置することを宣言している。松山氏はこう語る。

「JCHOやNHOなどは各病院がバラバラに経営しており、コロナ患者を受け入れて、自分たちの経営がどうなるのか、という狭い視点でしか考えられなくなっているのでしょう。自分たちが地域のラストリゾート(最後のよりどころ)である認識がないように見えます。イギリスでは財源も一体になって運営されているので、個別の病院の経営を気にせず、大胆に体制を整えることができる。日本もJCHOなどの公立医療機関が中心となって、『3割の病床を確保します』『通常医療は民間でお願いします』といった体制をとるべきだったと思います」

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大災害が起きたときに同じ事態に陥るリスクも