新型コロナウイルスの「オミクロン株」の感染拡大を受け、尾身茂・政府分科会会長が「ステイホームは必要ない」と発言したことを受けて、政府、自治体、医師会など各方面から強い批判の声が上がっている。
さらに尾身氏と専門家の有志らは20日、「若年層の多くは軽症で自宅療養で軽快するので、検査せず、症状のみで診断も検討」などの対応策案を厚生労働省の会合で提示。これまでの対策を大転換する案に対し、政府は「若者らに誤ったメッセージを与えかねない」と軌道修正に乗り出した。いったい何が起こっているのか。
19日、尾身会長は記者団に対して、「『人流抑制』ではなく、『人数制限』が一つのキーワード」、「今回は何でもやめるという、ステイホームなんて必要ないと思う」などと語った。これまで取り組んできた外出の自粛など感染対策を否定するかの発言に国民だけではなく、自治体や医師会など関係者の間にも衝撃が広がった。
20日に全国知事会と日本医師会による会合が開かれ、全国知事会長の平井伸治・鳥取県知事は「『会食の人数制限さえしっかりすれば出歩いてもいいし、接触を増やしてもいい』との趣旨で聞こえた感がある」、「知事たちが困惑している、発言の趣旨を明確にしてもらいたい」と注文をつけた。政府の分科会メンバーを務める釜萢敏日本医師会常任理事も尾身氏の発言を念頭に「接触が減らないと感染が減らない。オミクロン株は感染力が非常に強く、人と人の接触が感染の一番の場面だ」などと発言した。
官邸からも疑問の声があがった。
「事前に何も聞いておらず、驚きました。若者らに誤ったメッセージを与えかねないミスリードな発言です。本来、こうした方針転換は専門家ではなく、首相や政府が発信すべきものですよ。尾身会長のスタンドプレーが行き過ぎたようにも見えました」(官邸関係者)
一部の分科会関係者らが尾身氏に発言の真意について、問い質す動きもあったという。
「分科会の感染症専門家が尾身会長に真意をただしたところ、『真意が伝わらなかった』、『滞留人口の抑制は必要』と話したそうです。しかし、尾身さんの発言がテレビで大々的に取り上げられ、いまさら遅いという感じですが……」(分科会関係者)