河野太郎前ワクチン担当相
河野太郎前ワクチン担当相

「河野氏は多い時は、月の半分くらい会見をしていました。それに対して、堀内氏は月平均で7回くらいですから」(政府関係者)

◆特技は黙って精神統一

 菅政権時代、新型コロナ対策の意思決定は首相、官房長官、厚労相、国土交通相、経済再生相の5人が参加する「5大臣会合」で決めていた。

「岸田政権になってからは、ワクチン担当相の堀内氏も加わるようになりました。堀内氏のコロナ対策の知識と経験の幅を広げられるように、あえて会合に入れたんです」(同前)

 ただ、この会合で、堀内氏は黙っていることが多いという。

「堀内氏の特技は黙って精神統一だそうです(笑)。ひたすら官僚の説明を聞いてうなずき、質問もほとんどなし。ただ人形のように大人しいという印象です」(政府関係者)

 こうしたエピソードを聞くと、なぜ、ワクチン担当相という重要なポストに抜擢されたのか疑問が沸く。前出の角谷氏はこう読み解く。

「堀内氏の義理の父の堀内光雄さんが宏池会会長を務めたこともあって、岸田氏は抜擢したんでしょう」

 安倍政権、菅政権時代は、前経済再生担当相の西村康稔氏(現・自民党コロナ対策本部長)や前ワクチン担当相の河野太郎氏(現・自民党広報部長)といった発信力の強い大臣がコロナ対応の要になっていた。

「発信力のある人を大臣にしたため、彼らの方が首相より目立ってしまった。その失敗を教訓にして、今度は発信力の弱めの人をつけ、大事なことは岸田首相がやるように代えたんです。そうすると発信力の軸足が岸田氏と後藤厚労相になりますから」(角谷氏)

 また“抜擢”の背景には堀内氏の地元・山梨県でのドロドロした政界事情もあるようだ。

「山梨県政界では、堀内家と長崎幸太郎知事との間に、長年にわたる確執が存在しているんです。長崎氏は知事に転身する前の2005年から2017年にかけて、衆院選で堀内一族と5回対決して3回、敗れています。堀内氏が岸田派(宏池会)に所属しているのに対し、長崎氏は二階派に所属。岸田氏は二階元幹事長をけん制するために、堀内氏を入閣させたと聞いています」(前出・官邸関係者)

 オミクロン株が急増する中、堀内氏のワクチン対応は本当に大丈夫なのか。

「昨年12月の国会では、堀内氏はまだ大臣になったばかりで勉強不足でも、通ったかもしれない。ですが、これからは、オミクロン株の感染拡大が深刻化しているので当然、野党からもグリグリやられるでしょう。昨年と同じような対応では、岸田氏の人事そのものが無謀だったのではないかという任命責任にもなると思います」(角谷氏)

 最優先課題のコロナ対策が国会で混乱しないように祈るばかりだ。

(AERAdot.編集部 上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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