平昌五輪ではザギトワ(左)を金メダル、メドベージェワ(右)を銀メダルに導いたエテリ・トゥトベリーゼコーチ(中央)
平昌五輪ではザギトワ(左)を金メダル、メドベージェワ(右)を銀メダルに導いたエテリ・トゥトベリーゼコーチ(中央)

「コーチの仕事は大変です」

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 オンラインで行われたISUスケーティングアワード(2020年7月)で最優秀コーチ賞に選ばれたエテリ・トゥトベリーゼは、ビデオメッセージでそう語っている。

「選手の指導者となり、友達となって心を通わせないといけません。教え子が最高の結果を出すと、本当に嬉しいです。期待通りの時も、予想外の時もあります」

 また教え子であるアンナ・シェルバコワは、「エテリコーチは強い人で、必ず目標を達成します」と恩師を評している。

フィギュアスケートに情熱を持っていて、私たち選手も感化されます。私たちの長所を伸ばすために、全力で支えてくれます。指導はとても厳しいですが、そのおかげで結果が出せます」

 シングルとアイスダンスの選手でもあったトゥトベリーゼは、世界を牽引する女子スケーターを次々と世に送り出している。拠点は、ロシア・モスクワにあるトップアスリート養成学校「サンボ70」のフィギュアスケート専用施設「フルスタリヌィ」。有名な教え子としては、ソチ五輪団体金メダリストのユリア・リプニツカヤ、平昌五輪金メダリストのアリーナ・ザギトワ、同銀メダリストのエフゲニア・メドベージェワらがいる。

 そして近年は、トリプルアクセルや4回転といった高難度ジャンプを跳ぶスケーターを育て、女子シングルに新時代をもたらした。現世界女王のアンナ・シェルバコワ、男子顔負けの高難度構成を誇るアレクサンドラ・トゥルソワ、2019年グランプリファイナル女王のアリョーナ・コストルナヤは、シニアデビューした2019-2020シーズン、三人で国際大会をことごとく制している。また、北京五輪シーズンである今季シニアに上がったカミラ・ワリエワは、高難度ジャンプだけではなくバレエの素養に裏打ちされた美しさも持つ“最高傑作”だ。

 圧倒的な実績を誇るトゥトベリーゼだが、自身がフルスタリヌィを「工場」と表現したこともあってか、教え子たちの選手寿命の短さが指摘されている。リプニツカヤはソチ五輪後トゥトベリーゼの下を離れ、19歳で引退した。19歳のザギトワと22歳のメドベージェワも、平昌五輪から約4年経った今、ロシアの強化選手から外れている。次々と有望株を輩出するフルスタリヌィでは、日々の練習が過酷な競争でもあることは想像に難くない。競い合う環境は成長を促すと同時に、異様に早い新陳代謝をも招くのだろう。

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北京五輪の金メダル候補も門下生