一方、北海道1区で落選した自民党の船橋利実氏の惜敗率は90.4%という高い数字だったが、比例復活は果たせなかった。

◆維新は惜敗率50%以下でも8人当選、自民や立民は90%でも落選

 立民のグラフをみると、70%台以下の惜敗率で比例復活当選した議員はゼロ。最低限、80%台の惜敗率が必要だった。

 沖縄3区は自民党の元沖縄・北方担当相の島尻安伊子氏が当選。約7000票差で敗れた立民の屋良朝博氏は惜敗率91、7%でも比例復活は叶わなかった。鹿児島1区で落選した立民の川内博史氏も88.1%の惜敗率でも復活ならず、大阪10区で落選した立民の副代表・辻元清美氏も維新旋風が吹く中、82,7%の惜敗率だったが、バッジを失った。

 そんな中、全国の比例で計25議席を獲得した維新。比例復活当選した候補者の中で、惜敗率が90%を超えたのはたった1人で、80%超えは2人。惜敗率が50%以下で比例復活となった当選者は8人もいた。

立憲民主党の惜敗率と比例復活の状況
立憲民主党の惜敗率と比例復活の状況

 小選挙区で徳島1区の吉田氏のように次点にも届かず惨敗したが、比例復活した議員は9人にも上る。

「制度だから仕方ないが、維新のように小選挙区で大差で負けても比例で復活するのは民意としてどうか」と自民、立民の落選者から恨み節が聞こえる。

 衆院選で日本維新の会は全国で96人を擁立したが、比例復活について松井一郎代表は、記者会見でこう語った。

「候補者を多く立てたので比例票を掘り起こせた」

 日本維新の会の国会議員はこう話す。

「候補者を増やすことで、小選挙区ではぼろ負けしても自民党も立民もいやだという層を掘り起こして比例票を積み上げる作戦が成功した。吉田氏は兵庫県内の市議だったが、党本部主導でつながりのある徳島1区にまわってもらい、議席につながった」

 衆院選が終わった直後「1票の格差問題」で全国各地で訴訟が起こされた。過去に国会でこの問題を参考人として訴えた慶応大学名誉教授(憲法学)の小林節氏がこう語る。

「今の制度は政治家の都合で、小選挙区で落選した人が比例で復活できるようになった、妥協の産物。小選挙区と比例代表は、切り離し別々に運用されるべきです。それを1度負けた人が比例復活できる制度にしてしまったので、惜敗率90%だが落選、20%でも当選という矛盾が起こってしまい、国民にはわかりにくいことになっている」

(AERAdot.編集部 今西憲之)