村田は2010年9月30日の阪神-横浜戦でも矢野燿大(現阪神監督)の引退試合で一発を放っている。3-1と阪神が2点リードの9回無死一、二塁で阪神の守護神・藤川球児から左越え逆転3ラン。試合中継していたサンテレビの実況・湯浅明彦アナウンサーが「行くな!行くな!越えるな!」と絶叫したが、ボールはスタンドに消えて甲子園は静寂に包まれた。この時に阪神のマスクをかぶっていたのは城島健司(現ソフトバンク会長付特別アドバイザー)。矢野は9回2死で勝っている試合展開でマスクをかぶる予定だったが、出場がないまま引退試合を終えた。

「阪神は当時、中日と熾烈な優勝争いを繰り広げていて、打線の主軸でもあった城島を外すわけにはいかなかった。9回もその裏の打席で城島に打席が回ってくる可能性があったので、同点、逆転される事態を想定して交代できなかった。変則的な引退試合のプランが裏目に出る形となってしまった」(スポーツ紙記者)

 この試合で敗れた阪神は最終的にリーグ優勝した中日に1ゲーム差で届かず、2位で終わった。ただ本塁打を放った村田も、痛打を浴びた藤川も責められないだろう。ガチンコ勝負だからこそ、想定しないドラマが起きる。それも野球の醍醐味だ。(松木歩)