松本さんに、勤め人の新たな選択肢パターンを3つ紹介してもらった。

 【パターン1:「個人事業主」という名のフリー】
 日本の企業はこれまで、競合他社に人材が採られるくらいなら自社で飼い殺しする考えがあった。そのため、いきなり独立して1人でビジネスを立ち上げることができない人が多い。中高年の起業で失敗したら後はない。サラリーマンに戻る道は閉ざされているから。結果、リスクを考え、独立は起業で勝負ではなく、個人事業主(フリー)になり、前にいた会社の下請け的な仕事をする。

【パターン2:同業を諦め、ライバルのいない業種を見つける】
 普通の会社員は、みんな同じような能力と実績を積んでいく。それが自分にとっての強みだと思っていても、客観的にみれば周りと大差ないことが多い。幹部コースに抜擢されていなければ、すでに同業では勝負がついたと悟り、異業種で能力を生かせる場を探す。同業他社に転職して、同じ能力を持つ人同士で勝負するのでなく、ライバルがいない場所に目をつける。例えば、自分がシステムエンジニアなら、ITに疎い業界や会社にいけばオンリーワンになれるチャンスが高い、それを仕事につなげる。

【パターン3:ネットワークを活用して起業や経営を引き継ぐ】
 中高年で成功する典型的なパターンは、人脈や経験を活用できる人。たとえば、すでに成功例が多いのは4大商社にいた人たち。海外でビジネスを立ち上げたり、子会社や合弁会社の経営を引き継いだりする経験を積んできたので、早期退職してからも国内外のネットワークを活用して起業や会社役員になってうまくいく人が少なくない。

 一方、銀行員の窓口業務など、テクノロジーによって置き換えられていくような仕事の経験を積んできた人は難しくなってくる。

◆45歳からの新しい職場 失敗しないコツ

 これらの道に進むとして、新しい環境に馴染むためのコツは何か。残念ながら、失敗するタイプを松本さんは「怪獣オレガー」と呼ぶ。「オレが(私が)」と上から目線でグイグイ割り込んでくる人だ。本人は悪気がないが、嫌われがちだという。

「大企業から転職した人は、前にいた大企業名をあげて『○○会社ではこうしていたんだよねぇ~』が口ぐせなっていることがあります。前の会社の社員のように、自分の思った通りに周りが動かないから、指導してあげないと、と思い込んでいます。大企業から来たものですから、上の立場の人に『ぜひ、うちの社員を鍛えてください』とお膳立てされていますし、45歳で主要なラインの流れから外れたからこそ、余計に自分自身を認めてほしいという気持ちも強い。それが、『怪獣オレガー』になります」

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