2021年7月、名古屋場所の千秋楽で、照ノ富士を下し、優勝を決めてほえる白鵬(C)朝日新聞社
2021年7月、名古屋場所の千秋楽で、照ノ富士を下し、優勝を決めてほえる白鵬(C)朝日新聞社

 横綱・白鵬が現役引退する意向であることがメディアで一斉に報じられた。7月の名古屋場所で千秋楽の大関・照ノ富士戦で全勝決戦を制し、昨年春場所以来45度目の優勝。全勝優勝は自身の歴代最多記録を更新する16度目で、一人横綱の優勝は戦後最多の19度目と新記録を次々と打ち立てた。6場所連続休場明けでの優勝は横綱大鵬の5場所を抜いて最長のブランク。結果的にこの名古屋場所が、現役最後の場所となった。

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 白鵬は取組後の優勝インタビューで、「右ひざがボロボロで言うことを聞かなかったので、この一番ですべてをかけようと思って気合い入れてやりました。まさかこの年で、全勝で優勝できるなんて、場所前は思わなかったので本当にホっとしている」と安どの表情を浮かべていた。

 今後の目標を聞かれると、「これで横綱として899勝。あと1勝で900勝なので1勝目指して頑張っていきたいと思います」と誓ったが、所属する宮城野部屋に新型コロナウイルス感染者が出た影響で9月の秋場所を全休。戦う炎が消えてしまったのかもしれない。

「激闘を繰り返して心身共に限界は近かったと思います。色々言われてきましたが、樹立した記録は今後もなかなか破られることはないでしょう。白鵬は決してエリートではない。来日した時は体が細くて、来日した際にもスカウトの声がまったくかからなかった。モンゴルの帰国直前に宮城野部屋への入門が決まり、努力を積み重ねて番付を駆け上がっていった。まさに史上最強の横綱といってよいと思います」(スポーツ紙記者)

白鵬の土俵入り(C)朝日新聞社
白鵬の土俵入り(C)朝日新聞社

 22歳2か月の史上3位の年少記録で横綱になると、モンゴルの先輩・朝青龍が現役引退して「1人横綱」の期間が長かった。横綱在位84場所、通算1187勝、幕内1093勝はいずれも最多記録。ただ、称賛する声が多かったかというとそうではない。かち上げなどの取り口や、土俵でガッツポーズするなどの態度が「横綱としての品格を欠く」と批判された。

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賛否両論だった白鵬の「相撲道」