最新刊『世界100年カレンダー』(朝日新書)で、「世界の国々は、日本と同じ少子高齢化の道を進む」と説くジャーナリスト・河合雅司さんは、今後、世界規模で競争が激化する「高齢者マーケット」に注目する。そのとき重要な視点について本書より紹介する。

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■日本マーケットの魅力とは

 同時に気掛かりなのが、世界マーケットの中で存在感を小さくしていく日本マーケットが、グローバル企業や世界的な投資家たちの目にどう映っているのかという点である。

 外資系企業による投資を意味する「対内直接投資」の残高が国内総生産(GDP)に占める割合について内閣府がまとめているが、2020年の日本は7.4%(12月末確報値)にとどまっており、2019年の経済協力開発機構(OECD)加盟国平均値56.4%と比べて極端に低い。G20各国の中でも断トツの最下位である(中国とメキシコはデータが無い)。これは外資系企業にとって日本はプレゼンスが低く、経済規模の大きさと比べても魅力がない国ということを示すものだ。

 経済産業省の「外資系企業動向調査」によれば、新規参入企業数は過去10年間では2014年度の113社がピークだ。2019年は48社で、ここ数年50社前後で推移している。

 中国は2020年の人口センサス(国勢調査)で生産年齢人口を9億6776万人としており、日本の約13倍にあたる。中国国内に日本マーケットが13個も内包されているのと同じだ。インドは12.5倍、米国でも2.9倍である。両国は人口が増えているため差は開く一方で、2050年になるとインドは21倍、米国は4.4倍となる。本書の第3話で詳しく述べるが、国連の「世界人口推計」によれば、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国の人口増加は著しく、マーケットは若い。

 これからの日本というのは、外資系企業が「日本マーケットを積極的に取り込まなくても問題ない」と、いつ言い出してもおかしくない状況に置かれるということである。1人当たりの所得を増やし、購買力を高められる経済環境に転じなければ、“その時”は想定以上に早くやってくるだろう。マーケットとしての輝きが鈍ったならば、海外資本の撤退どころか、期待するようなレベルの外国人労働者の呼び込みも叶わなくなる。

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一方、高齢者人口で比較すると…