だが、セレブな生活が、必ずしも心を満たすわけではなかった。
イーロンが生まれた南アフリカ共和国は男尊女卑の気風があり、ジャスティンは威圧的な態度を取られることが度々あった。ある時は、髪の毛をブロンドに染めるように言われた。もちろん彼女は断ったが、イーロンは何度も言い続けた。
従順な女性ではなく、ジャスティンの気が強く野心的なところに惹かれたイーロンだったくせに、結婚した妻を自分の思い通りにコントロールしたい亭主に変わっていた。
小説を書きたいというジャスティンのキャリア志向に水を差したこともあった。
あれこれ言われることに頭に来たジャスティンはある日、「私はあなたの妻なのよ、あなたの部下じゃないわ」と言い返した。しかし、イーロンはこう切り返した。「もし君が僕の部下だったら、クビにしている!」
■仕事か? 家庭か? イーロン・マスクが選んだのは
ジャスティンは、小説家になりたいという自分のキャリアプランを犠牲にして子育てに振り回されている日々に不満を募らせていった。
一方の夫は仕事に明け暮れ、子育てには向き合わず、自宅に帰っても心は会社に置いてきた状態だった。
この頃、テスラはロードスターの出荷が遅れ、スペースX社のロケット「ファルコン1」は打上げ失敗が続いていたのだ。イーロンの肩には、数百人の社員とその家族の運命がのしかかり、対処すべき問題は山積していた。
「テスラかスペースXか、どちらかを手放すべきだ」
これが世間の論調だったが、イーロンはテスラもスペースXも手放さなかった。結局、イーロンとジャスティンは離婚へと突き進んでいくことになる。
ジャスティンが要求した慰謝料は、世間相場よりは贅沢だが、セレブとしてはそこそこのものだった。現金200万ドルに自宅の土地や建物、月々の生活費と養育費。そしてテスラのEVロードスターだった。5人の子供たちについては共同親権を2人が有している。
ところで、イーロンとジャスティンの離婚はすんなりとはいかなかった。そして、離婚調停がもめている最中にイーロンは別の若い女性との恋を始めようとしていた。2人目の女性については次回にお話ししよう。