7月30日に記者会見した菅義偉首相(C)朝日新聞社
7月30日に記者会見した菅義偉首相(C)朝日新聞社

 東京五輪がメダルラッシュで盛り上がる中、国内の新型コロナウイルス感染者は7月30日、1万744人が新たに確認された。2日連続で1万人を超え、3日連続で過去最多を更新中だ。東京都の感染者数も3日連続で3千人を超えた。

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 大阪、埼玉、千葉、神奈川の4府県に対する緊急事態宣言の再発出に伴い菅義偉首相の記者会見が同日夜、開かれた。同席した政府の分科会の尾身茂会長が「最大の危機」と表現する一方で、記者の質問にまともに答えられない菅首相の姿に国民から「この首相で大丈夫か」と疑念の声が続出。菅首相と記者団の全く噛みあわない質疑応答を徹底検証する。

「具体的な目標は? 今の目標はないのですか」

 30日に開かれた首相会見で記者席からこう声を上げたのはフリージャーナリストの江川紹子さんだ。

 江川さんは、菅首相がワクチン接種には「8月末までに2回接種を4割に」などと目標を掲げる一方で、人流を減らすことには目標がないと指摘。どれだけ人流を減らすのか、そして、どうやって減らすつもりなのか、などと質問をした。

 それに対して菅首相は「東京大会の開催が決定してから、東京に集中する人流を防ぐための対策は、当時から考えて、行ってきた」などと答えた。これまでの実績を示した形だが、江川さんが聞いたのは、今、人流が十分に減っていないことに対する菅首相の課題認識だ。

 首相会見では追加の質問はできないことになっているが、思わず江川さんの口から冒頭の再質問が飛び出した。これに対し菅首相は「ですから、そこはできていると思っています」などとトンチンカンな答え。

 江川さんが「街の人流が減っていないのですが」とさらに質問すると、小野日子内閣広報官が「席からのご発言はお控えください」と遮った。

 結局、人流を減らすことの目標値は聞かれなかった。会見後、江川さんに声をかけると「ワクチンが行き渡るまでは人の移動や接触を減らしていくしかない。それに対する目標がないのは問題。あまり興味がないのかもしれない」と漏らした。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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噛みあわない質問と答え