29日の卓球女子シングルス3位決定戦で、世界ランク2位の伊藤美誠(20)=スターツ=がユー・モンユー(シンガポール)に勝利し銅メダルを獲得。五輪女子シングルスで日本人女子初となるメダルをもたらした。ただ、自国開催の五輪で頂点だけを見据えていた伊藤に笑顔はなかった。

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「最低限の銅」、というのが3位決定戦に挑んだ伊藤の本音だったかもしれない。

 同日昼過ぎに行われた準決勝では、世界ランク3位で第2シードの強敵、孫穎莎(中国)と対戦したが、今大会の好調ぶりが嘘のようにいいところがなく、0ー4のストレート負けを喫した。同じ20歳で、過去の国際大会では2勝5敗と相性の悪かったライバルに屈し、試合後は「(試合内容が)惜しくもなかったので、すごく悔しい」と涙を浮かべて言葉を絞り出した。

 幼少期から、かつて卓球選手だった母・美乃りさんと猛特訓を続けた伊藤。美乃りさんは寝ている娘に「中国を倒せるのは美誠しかいない」と語り、暗示をかけていたという逸話もある。

 2018年のスウェーデンオープン女子シングルスで、劉詩ブン、丁寧、当時世界ランク1位の朱雨玲といった、卓球王国・中国が誇るトップ選手を撃破して優勝。中国メディアからは敬意を込め、「大魔王」と称されるようになった。

 全国紙の五輪担当記者は語る。

「それ以前も、たまに中国のトップ選手を倒す日本人選手はいましたが、あくまで格下の外国人がまぐれを起こしたという扱い。中国が誇る強豪3人を一気に撃破したことは、中国には衝撃でした」

 世界ランク2位。心身ともに充実し、金メダルだけを目指して挑んだ今大会。その力を見せつけつつ、思わぬ“反発”にも見舞われた。

 水谷隼と組んだ混合ダブルスでは、決勝で中国人ペアを倒し、日本卓球界に史上初となる五輪金メダルをもたらした。その後、中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」には中傷コメントが殺到し、非表示となった。
水谷と伊藤の戦いぶりを称賛するコメントもあったが、中には2人が試合中に不正行為を働いたかのような、難癖としか思えない書き込みもあった。

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