千葉県から車で来た3人組は、全員19歳の大学1年生。10年以上サッカーをやっているという。

「テレビの応援だけでは、気持ちが抑え切れなくなって来ました。ここにいるだけで、日本代表と気持ちがつながっている気がするんです。日本代表の強さの秘密はミーハーみたいなことしか言えないけど、久保建英の得点力と守備陣の安定感。遠藤航、酒井宏樹、吉田麻也はもうヤバイ、ガチ凄い」

 試合が終わったのは午後10時半頃。青いユニフォームを着た大会関係者の3人組の女性に話しかけると、「私たちも中に入れなかったので、全然、試合を見てないんです。微妙に音は聞こえてきました。日本が勝ったので嬉しいです」 

 スタジアムの最寄り駅は横浜線の「小机」駅だ。試合前の夕方、駅前の商店街をまわってみると、シャッターが閉まっている店が半分ほど。盛り上がりは感じられない。

「個々のお店のオーナーの高齢化、それに飲食店はコロナで店を閉めているところが多いんです。小机には居酒屋もあるんですが、無観客では試合が終わった後にお客さんも来ない。オリンピックの恩恵はありませんね」 (40代の女性店主)

 小机商店街共同組合の理事長は、「横浜市から送られてきた」という東京オリンピックのポスターを店の外に貼りながらこう話す。

「スタジアムのお膝元なんだけど、オリンピックムードはゼロ。横浜市からオリンピックのポスターを数十枚送ってきたからそれを組合員に配ったくらい。特にイベントもやらないよ」

 一方、横浜市内の繁華街。「まん延防止等重点措置」が出され、緊急事態宣言へも切り替えが検討されるなか、多くの飲食店が試合開始前には店を閉めていた。ホームページで「無観客試合とは言わせない!熱い応援をしよう!」と掲げていたスポーツバーを訪ねてみると、試合開始時には20人の客。次々にサッカー好きの客が集まってきた。

「日本代表が1点を取ると、テキーラが売れて盛り上がりました」(女性店員)

 店には7台のテレビがあり、営業時間中はオリンピック競技を流しっぱなし。5人で応援していた24歳の男性は「この店にはよく来ます。サッカーはみんなで盛り上がるから最高」とはしゃいでいた。

(文/AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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