東京五輪で、最も注目される選手の1人が競泳女子の池江璃花子だ。

 池江は18年のアジア大会で日本人初の6冠を達成。複数種目合算で18回日本記録を更新するなど異次元の泳ぎで、東京メダルで複数の金メダル獲得が期待された。だが、当時18歳だった19年2月に白血病であることを発表。10カ月間の闘病生活を経て19年12月に退院した。20年8月にレースに復帰したが、当然ながら本来の状態には程遠い。周囲からの注目が高まったが、池江は「目標は2024年パリ五輪」と言い続けていた。

「この時は東京五輪に出場するなんて想像すらできなかったです。水泳は3日休むとブランクを取り戻すのに1カ月かかると言われます。池江さんは長期療養で体力も筋肉も落ちていた。日常生活で穏やかな生活を送ってほしいですし、24年のパリ五輪を目指すとしても心身に負担がかからない程度に無理をしない欲しいという思いでした」(テレビ局関係者)

 ところが、水泳関係者が「信じられない」と口をそろえて驚く奇跡を起こす。東京五輪代表選考を兼ねて行われた4月の日本選手権で100メートルバタフライ、100メートル自由形で優勝。非五輪種目の50メートルバタフライ、50メートル自由形も制覇した。100メートルバタフライのレース後、涙が止まらない。「努力は報われるんだなと思った。このバタフライが一番時間がかかると思っていた種目。何番でも、ここにいることに幸せを感じようと思った」と声を震わせていた。

 新型コロナウイルスの感染が収束していない中、東京五輪開催に賛否両論の意見がある。池江は複雑な思いを吐露している。5月7日に自身のツイッターでこう記していた。

「Instagramのダイレクトメッセージ、Twitterのリプライに『辞退してほしい』『反対に声をあげてほしい』などのコメントが寄せられている事を知りました。もちろん、私たちアスリートはオリンピックに出るため、ずっと頑張ってきました。ですが、期待に応えたい一心で日々の練習をしています。オリンピックについて、良いメッセージもあれば、正直、今日は非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。長くなってしまいましたが、わたしに限らず、頑張っている選手をどんな状況になっても暖かく見守っていてほしいなと思います」

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池江「政治利用」に批判が殺到