18時ごろになると、仕事を終えた関係者らが続々とビッグサイトから出てくる。付近のホテルに直帰する外国人グループもいるが、一定数は駅や都バス乗り場へと向かっていく。公共交通機関の利用は、日本入国から14日間は禁止されており、15日以降も大会専用車の利用が推奨されている。滞在日数を聞くために改札前で外国人グループに声かけを試みたが、「We are not allowed」と言い残し、足早に改札を抜けていく。その後、10組以上の外国人関係者に声をかけたが、いずれも応じてくれなかった。

 なかには仕事帰りにその足で、付近のマクドナルドに立ち寄る欧米からの外国人男性2人組の姿もあった。注文の際に店員が聞き取れず、至近距離で話し込む場面も。テイクアウトで済ますと思いきや、そのままイートイン。レジ前の席で、堂々とポテトやハンバーガーを食べながら会話を楽しんでいた。

 この日観察しただけでも、本当に定められた指針の運用ができているのか、気になる場面は多々あった。

 プレイブックは、東京都と国のほか、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、五輪組織委による議論を経て、専門家らの科学的知見を踏まえて作成されたもの。適用期間は7月1日からで、違反者には、警告や参加資格の撤回などが適用されることもあると記されている。

 こうした海外関係者の行動を組織委はどうみているのか。組織委に個々の事例に関して10項目の質問を送ったが、担当者は事実関係には触れず、「ご質問にあるような事例については様々な状況があるので一概には申し上げられませんが、大会関係者が守るべきルールについてはプレイブックに掲載しております」とだけ回答した。

 前出の会場関係者の女性は、次のように率直な思いを漏らす。

「IOCがちゃんとしているのは表向きの発信だけで、中を見ている限り、しっかりと管理できていないのではと感じてしまいます。もうすぐ五輪が本格的に始まるので、このまま続けて感染者が増えないか心配です。定めたルールどおりしっかり運用していればいいのですが、こんな状況では応援できないというのが正直なところです」

 5月10日の参院予算委員会でも、丸川珠代五輪相が「指定されていない行動範囲を管理されない状況で、うろうろするということは絶対にない状況にしていく」と断言していた。今後大会が本格化すれば、ますます感染の懸念は膨らむばかり。定められたルールが"絵に描いた"とならないよう、運用を徹底してほしい。

(取材・文=AERA dot.編集部・飯塚大和)