YouTubeで動画を配信する現役の選手はプロ野球界だけにとどまらない。特に多いイメージを受けるのが“格闘家系YouTuber”だ。

 その中でも最も影響力があるのは、なんといっても総合格闘家の朝倉未来だろう。朝倉未来は19年にYouTubeデビューすると、MMAファイターという強みを生かした動画を中心に人気を集め、現在の登録者数は184万人。アスリートYouTuberという枠を超えて、今や誰もが知る存在となった。

 また選手としても、総合格闘技の大会としては18年ぶりの東京ドーム開催となった「RIZIN.28」(6月13日)でメインを務めるなど、格闘技界の中心人物でもある。PRIDEが消滅して以降、日本の総合格闘技は下火となっていたが、徐々に人気が戻りつつある今の状況の中で、最も大きな役割を果たしたのは間違いない。YouTubeでの活動を通して、そのスポーツへの注目度を上げるという好例を作った。

 しかし、YouTubeの収益が格闘家として稼ぐ収入を上回っていると言われ、配信の頻度も高いため「格闘家としての練習がおろそかになっている」「競技者としてのハングリー精神が失われている」といった批判もある。先日の「RIZIN.28」でもクレベル・コイケに一本負けを喫し、ファンからはもっと練習に専念して欲しいという声も多く聞かれた。現役選手がYouTuberとして活動するのには難しさもあり、良い面だけではないのも実情だ。

「難しいのは本業との比重です。朝倉未来は格闘家として世界トップレベルではないがYouTuberでは大成功者。好きなことを発信して楽しくやりたい、となるのも理解できる。逆に田中などはまったく反対の立ち位置。野球界で世界トップクラスでありYouTuberとしては新参者のルーキー。今後、田中らがYouTuberとしても成功した時にどうなるのか?野球では輝かしい実績を残し、山ほどお金も稼いだ。YouTubeとの向き合い方に注目している」(SNS事情に詳しいフリーフリーライター)

 主に登板後の感想などを語る田中に対して、様々なジャンルのものに挑戦する朝倉未来とではYouTubeで動画を配信する意味合いも違い、更新の頻度も異なる。だが、互いに現役選手としての活動をしながら、競技などの広報的な役割も果たしている点は重なる。ネットが主流になった現在では、SNSでの活動がそのスポーツの人気さえ左右する時代となった。今後も増えるであろう現役選手のYouTuberが、どうやって本業のスポーツとバランスをとっていくのか、どのようにスポーツを宣伝していくのか、アスリートとYouTubeの関係により注目が集まる。